第2話 いざ、香港へ参る

第2話 いざ、香港へ参る

ついに、待ちに待った出発の日がやってきた。

 

これから1ヶ月間、異国の地バリで予測不能の大冒険が始まるかと思うと、興奮してテンションが上がりすぎて、行く前から体がオーバーヒートしそうになった。そんな興奮状態で、マルセロとゆうやと共に空港へ向かった。

 

沖縄の那覇空港からバリに行くには、香港とマレーシアで乗り継がないといけない。
まずは、人生初の香港へ飛んだ。

 

香港の空港に到着して、以前にも香港へ来たことがあるマルセロ師匠の指示に従って、バスの切符を買ってバスに乗り込んだ。1時間後、宿泊予定のホステルのあるビルに到着した。
格安のホステルを予約したとはいえ、それを差し引いてもビルの外観はお世辞にも綺麗とは言えない。しょうがない。

同じビルの他のホステルに泊まるマルセロと別れて、オレとゆうやはエレベーターで他のホステルのあるフロアへ上った。

 

ホステルのフロントデスクで中東系のスタッフに迎えられた。
スタッフに予約名とツインルームを予約したことを伝えた。スタッフは、予約リストを確認するも何やら首を傾げている。

他のスタッフと彼らの母語で話し始めた。
何を言っているのかさっぱりわからない。怪しいぞ。

 

「すみません。ちゃんと予約されていないらしく、まだお部屋の準備ができないので荷物をお預かりしますよ」

 

「いや、この通りにちゃんと予約確認メールもきましたよ」
オレはケータイの予約確認メールを見せた。

 

「いや、なにかの手違いでしょう。予約されていません。これからお出かけになりますか? 1時間後にはお部屋の準備ができていますので、1時間後にお部屋に案内致します」

 

この状態だと文句を言ってもどうにもならなさそうなので、ゆうやにも事情を説明して大人しく荷物を預けた。もちろん、ゆうやも不信感を抱いた表情だ。

 

ふたりとも、ものすごくいい加減な雰囲気をスタッフから感じ取ったのだった。

 

オレたちは、マルセロと合流してディナーへ出かけた。
マルセロにこれから何を食べるのか聞いてみると、
「この香港で一番おいしい物が食べられるところへ連れて行ってやる。ついてこい」
オレとゆうやは、自信満々なマルセロ師匠のあとを着いていった。

 

ホステルから2ブロックくらい歩いたところで、ビルの地下へ通じる階段を降りていった。
地下1階にたどり着くと、ほぼ世界中のどこでも食べられる見覚えのある、赤と黄色のロゴマークがやたらと目立つチェーン店へたどり着いた。

 

まさか、ここではないだろう。ここを通って別のレストランがあるんだろう。オレとゆうやはそう思っていた。
が、マルセロがカウンター前に続く列へ並んだ。

 

マクドナルドかーい!!!笑
「え、マルセロ、ここ?笑」
「もちろんここだよ。オレは香港料理は嫌いだから、オレにとって、マクドナルドのハンバーガーは香港のどの料理よりもウマイ」

良い意味でか、悪い意味でかわからないほどに期待を裏切ってくれた。
オレとゆうやは顔を見合わせて大笑いした。
マルセロ師匠、さすがです。

 

オレは香港で一番おいしい料理(マルセロ師匠いわく)、ビッグマックセットを食した。
食事のあと、マルセロは仕事で使うカメラの部品を買うために、カメラ屋さんへ向かった。
オレとゆうやは、ホステルでチェックインするために引き返した。

 

ホステルに戻ると、スタッフが部屋へ案内してくれた。
部屋のドアを開けると、そこには
2段ベッドが二つ置かれていた。ドミトリーではないか。

 

スタッフが優しく説明してくれた。
「ツインルームは予約がいっぱいで、今夜はここしか空いてないんだ。ドミトリーを貸し切りにしたら、普通ならもっと高くなるんだけど今回は特別に二人分の料金でいいですよ。二人ともラッキーですね」

 

全く自分の非を認めないどころか、うまく言いくるめようとしている。
ツッコミどころがありすぎて、もう何も言わないことにした。笑い飛ばすしかない。

 

とりあえず、今夜の寝る場所は確保できたから良しとしよう。大冒険に相応しい幸先の良いスタートだ。