第27話 裸の決闘

第27話 裸の決闘

 

 

ジョナスと連絡を取り合ってディナーの約束をしたところだが、オレとゆうやはランチのあと何も食べていない。

すでにランチから8時間経っていて、ふたりとも空腹は極限まで達していた。ちょうどそのとき、ピザのにおいが漂ってきたので、においの元を辿っていくと持ち帰りもできるピザ屋さんを発見した。

 

 

 

ショーウインドウに4、5種類ほどのピザが一切れずつカットされて並べられている。一切れが手のひら2つ分ほどでボリュームがハンパない。そこから選んでひと切れずつ注文できるようで、オレは3切れとドリンク、ゆうやは2切れとドリンクを頼んだ。

 

 

 

あまりの空腹感に1枚だけは席に座って食べてから出発することにした。オレもゆうやもぺろりとピザを平らげて、ホステルに戻るため席を立った。

モールの出口に向かいながらもオレは2枚目のピザにかぶりついていた。まだまだ空腹で、行儀が悪いなどと言ってられない状況なので、夢中になってピザにかぶりつく。出口に着く頃には、オレはすでに2枚目を食べ終わっていた。

 

 

 

オレとゆうやはタクシーに乗ってモールをあとにする。そして、タクシーの中で3枚目のピザに取り掛かった。ピザは温かいうちに食べなきゃ。3枚目を食べ終わると、デザートも入らないほど満腹になってしまった。ディナーの時間まではまだ時間があるので、それまでに消化して少しは食べれるようになるだろう。

 

 

 

帰りは、来るときよりは交通量が減り、意外とスムーズにホステルまでついた。

ホステルについて、さっそく出かける支度を始めた。部屋に はベッドしか無いので、オレはシャワーを浴びるために下の階に降りた。

 

 

 

服を脱いで、シャワー室に入ってお湯を出す。シャワーヘッドからちょろちょろと弱い水圧のお湯が出てくる。お湯が出ないホステルもざらにあるので、お湯が出るだけマシである。

弱い水圧は気にせずに体全体にお湯をかけてリラックスモードに入った。シャワーの時間は、いつでもどこでも至福のひとときである。お風呂に浸かる習慣のない沖縄で育ったオレにとっては、リラックスするにはシャワーのお湯だけで十分である。

 

 

 

そして、ディスペンサーからシャンプーを手に取り、自慢の黒髪の直毛を念入りに洗う。頭皮をごしごしと気持ちよくマッサージしている時に、オレは異変に気づいた。

排水口で何やら黒い物体が動いている。いったいなんだろうと思いながら、排水溝を見つめていると・・・。

足がいくつもある気持ち悪いヤツが出てきやがった。ムカデ様のご登場である。

 

 

 

あまりの恐怖に悲鳴すら上げられない。人二人分しかないスペースでは全く逃げ場がないし、全裸じゃ無防備すぎる。

どうしよう。どうしよう!

そうだ、シャワーで流そう! チョロチョロ・・・

シャワーヘッドをムカデに向けて水圧で押し流そうとするも、全く効果なし。『水圧が弱すぎる!!!!』

 

 

 

人間の知恵を使うんだ! シャワーヘッドを握って、水の出口を小さく限定して水圧を弱冠強めた。これならいけるかもしれない!

再び、シャワーヘッドをムカデまで10センチの距離まで近づけて放水した。ムカデが飛び跳ねてこないかという恐怖もあるがやるしかない。

 

 

 

わずかにムカデが後退した。そのまま何回も何回もムカデに放水した。

ポトッ。ついにムカデが排水口に落ちてくれた。

このあと、またいつムカデが戻ってくるとも限らないので、急いでシャンプーを洗い流して体をさっと洗ってからシャワー室から出た。リラックスタイムが恐怖の時間に変わって、心臓がバクバクと大きく鼓動していた。

 

 

 

部屋に戻って、まだ興奮冷めやらぬ中ゆうやに一部始終を話した。笑いを取れると思ったが逆に引いていた。笑

虫や気持ち悪いものが苦手なゆうやには刺激が強すぎたようだ。悔しいから、おまえのシャワーのときもムカデが出るぞと強く脅しておいた。笑

 

 

 

それからゆうやもシャワーを浴びに行ったのであった。