第1話 冒険の誘いは突然やってくる

第1話 冒険の誘いは突然やってくる

 

 

それは2年前の秋のことだった。

 

 

 

オレは沖縄で民泊をしていて、世界中からたくさんのゲストを自分も住んでいる一戸建てに迎えて、
観光案内したり一緒に飲みに行ったり、とてもエキサイティングな毎日を過ごしていた。

 

 

 

そんな時、このエキサイティングな日常を凌駕するほどの冒険の誘いは突然やってきた。

 

 

 

同じ家に住むブラジル人のマルセロが、唐突にオレに命令を下した。
「ユウマ、来月から1ヶ月バリに行くぞ。オレはもう航空券買ったから、あとはお前だけだ。早く買うんだぞ」
「え!? うーん…わかった」
一瞬迷ったけど、めんどくさいから迷うことをやめた。イエスマンになろう。はい、行きます。

 

 

 

マルセロは、この年の5月に東京から沖縄に引っ越してきた、日系3世のブラジル人だ。
これまでに世界各地のいろんな場所に住んだことがあって、春から沖縄に移住してきていて、オレと一緒に住んでいた。
バリ島で水中カメラマンの仕事を見つけて、年が明けたら出て行くことが決まっていた。
仕事が始まる前の1ヶ月間をバカンスに当てた。

 

オレもそれに巻き込まれたわけだ。まあ、おもしろそうだから着いて行くことにした。

 

 

 

オレもすぐに航空券を購入して、マルセロ師匠に報告して、オレのバリ島の冒険への参加が確定した。
10年近く手伝わせてもらっているサッカースクールの監督さんにも報告した。
「来月から1ヶ月ほどバリに行くので、1ヶ月間休みます。よろしくお願いします」

 

 

 

その話をすぐとなりで聞いていたオレより年が6個下のユウヤコーチも
「え、マジですか! オレも行きたいです」
特に断る理由もなかったので承諾した。1ヶ月と言えど、コーチが2人も居なくなって監督さんには申し訳ないと思った。

 

 

 

しかし、オレはこれまでにも、突然カナダにワーホリで行って、1年過ごしたあとにブラジルで半年過ごして帰ってきたりと、
何回か『旅に出ます。探さないでください作戦』を使っている。
監督さんとは長い付き合いなので、オレの性格をよく知っている。はずだ・・・。

 

 

 

こうして1ヶ月後にバリ島に行くことが決まった。これからバリ島で、ハチャメチャなハプニングばかりが起きるとは知らず、
すべてはとてもかるーいノリで始まったのだった。