翌日、宿の仕事を終えたレントッドが、同じく宿のスタッフとして働くいとこのプトゥを連れて僕を迎えに来た。約束通り、僕を地元で人気のクラブ的なバーに連れて行ってくれるようだ。
「今日はユウマに楽しんでほしいから、もし女の子を連れ出せた場合、宿の空き部屋をオーナーに内緒で用意してるからタダで使ってね。それに、オレたちはバイク2台で来てるから、帰りはバイク1台使っていいよ。女の子を乗せて帰ってくれよな」
「え、ほんとにいいの! ありがとう(オレに楽しんでもらうためにここまでしてくれるとは、ふたりともめっちゃいい人じゃん)。でも、オレは口下手だから、うまくいくかわからないよ」
「大丈夫。オレたちに任せて。ユウマをしっかりサポートするよ」
たった一晩語り合っただけでここまでしてくれるふたりのおもてなし精神とともに、小澤マリア(日本の元AV女優)の大きな影響に驚くばかりである。
地元民の協力なサポートを得た僕はまさに無敵状態。今夜こそワンチャンある気がするぞ。
僕は大きな希望に胸(股間も少々)を膨らませながらレントッドのバイクの後ろに飛び乗った。
バーに到着すると、すでにバーからガンガンに音漏れしていた。これは期待ができそうだ。
ワクワクしながらバーに入った瞬間、僕は一瞬自分の目を疑った。5、6人の男女のグループが1ついるだけで、他に人がいない。せっかく僕を連れてきてくれたレントッドとプトゥにがっかりしている様子を見せると申し訳ないので、バーの良いところに目を向けて僕は努めて明るく振る舞った。
「あまり人はいないけど(しまった・・・)、このバーはダンスフロアが砂浜になっててオシャレだね」
バーの床はコンクリートだが、中心部のダンスフロアが掘りごたつのように段差になっていて、白い砂が敷き詰められている。
「この砂浜が人気で週末は賑わってるんだけど、今日は月曜日だからほとんど人がいないね」と少しがっかりした様子のレントッド。
逆に僕の方が申し訳ない気持ちになってしまった。
僕たち3人は、カウンターでビンタンビールを注文して席についた。ちまちまとビールを飲みながら様子を見守った。
しばらくしてアップテンポなノリのいい曲が流れ始めると、僕たち以外の唯一のグループから金髪の女の子二人組が砂浜で踊り始めた。
「ほら、女の子たちが踊り始めたよ。一緒に踊りに行こうよ」
「う、うん。行こうか」
待ってましたとばかりにレントッドが僕を砂浜へ連れ出す。
僕たちは女の子たちのそばで適当に踊り始めた。僕は彼女たちと目が合うと、にっこり笑って会釈した。以上。そこからは話しかけられず、リズムを取って突っ立っているだけだ。
レントッドとプトゥが僕を引っ張って女の子たちから離れた。
「ほら、どうしたの。声かけないの?」
「あぁ・・・あんまりタイプじゃないだ」
「こら、言い訳するんじゃない!」
「は、はい、師匠。すいませんでした」
僕たちは再び女の子たちのそばで踊り始めた。レントッドとプトゥが「早く話しかけろ!」と目で訴えてくる。ふたりの強烈なプレッシャーで僕は余計に声をかけられなくなり固まってしまった。
しばらくの間、僕がリズムを取って突っ立っているだけだったので、しびれを切らしたレントッドとプトゥは約束通り、救いの手を差し伸べた。
まずふたりが先陣を切って女の子に話しかけた。
ある程度話すと、ふたりが女の子たちに僕を紹介してくれた。ふたりが僕のためにここまでしてくれるとは脱帽だ。
僕はまず女の子たちに自己紹介して少し話せたのだが、しばらくすると何を話したらいいのかわからなくなり、それ以上会話が弾むことなく撃沈した。僕は失意の中、席へ引き返した。
レントッドとプトゥも席に戻り僕を慰めてくれた。
「また次があるさ。週末だったらもっとチャンスが合ったかもね。今日はしょうがないよ」
自分の不甲斐なさにはがっかりだが、ふたりの優しさが身に染みる。
その後は結局、女の子たちと絡むことなく、3人でもう1杯ずつビールを飲んで帰路についた。
宿に戻るとレントッドがアラック(バリの地酒)が入ったボトルとコーラを見せて笑顔で提案した。
「もう一杯いっとく?」
「はい、お願いします。師匠」
結局3人でアラックを飲みながら、今夜も小澤マリアの話で大いに盛り上がった。やはり旅の醍醐味とは女の子の尻を追っかけるのではなく、地元民との交流である。言っておくが、負け惜しみではない。心の底からそう思っていると思いたい。
エロの話以外にもそれぞれの価値観や今後の人生の展望などの深い話ができ、普通に観光していれば体験できないであろう充実した夜を過ごせた。
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