いつもノープランで直前にその日の予定を決めるオレたちは、今日はマルセロの提案でレンボンガンという島へ行くことに決定した。
仲良くなったホステルのスタッフたちに分かれを告げてチェックアウトした。
少し日本語を喋れるスタッフのおっちゃんが
「アリガトウ。マタアイマショウ」
と笑顔で見送ってくれた。
タクシーに乗ってボート乗り場に着くと、出発の時間までまだまだ時間があった。
ここで暇を潰す方法はたったひとつだけ。ビールを飲む。以上。
ボート乗り場の軽食店でビールを頼んだ。
カウンターでビールを頼む時におもしろい看板が飾ってあったのを発見した。
「ビールは1862年以来、ブサイクな人たちがセックスできるように助けている」
つまりブサイクな人たちが酔っ払って、お持ち帰りしたりお持ち帰りされたりするのを助けているということ。この看板のおじさんをもっとブサイクにしなきゃ説得力がないなあと思いながらも看板が気に入ったので、写真に収めておいた。
ビールを飲み干す頃にボートの出港の時間になり、オレたちはボートへ移動した。
先にカバンをスタッフに預けて履物を脱いでから、スタッフの先導に従って砂浜から膝まで水に浸かってボートに乗り込む。
5,60人くらい乗れそうな大型バスくらいのサイズのボートだった。
ボートの中はベンチシートで自由席になっていたので、オレたちは前方の景色が見える最前列に座った。これから遊園地のアトラクションが始まるかのようなそんな期待感があった。乗客全員が乗り込んで準備が整うと、エンジンの音が聞こえてきて徐々にボートが動き出した。
それからだんだんとスピードが上がってきて、ついに最高速度に到達すると急に自分の体が浮いた。
ん? 何が起こったんだ?
外を見てみると、ボートが次々と波を踏み台にジャンプしてその度に船体が何度も宙に浮いていた。
遊園地のアトラクションと言ってもいいぐらいに跳ねまくっている。
後ろの席を振り返ると、他の乗客がざわついているのがわかった。
怖がっている人。楽しんでいる人。それぞれが違った反応をしている。
体が浮く感覚にも慣れてきた頃、出発前に飲んだビールのせいでトイレに行きたくなった。船体が激しく揺れるこの状況で行きたくはないが、膀胱が耐えきれそうにないので行くしかない。
さっそく立ち上がって、掴まりながら席から席まで少しづつ進んでいく。
ボートが飛び跳ねる度に、オレも一瞬宙に浮いて転びそうになるところを必死に席に掴まってバランスを保つ。
膀胱に何度も衝撃がきて漏れそうになる。
そして、この状況でよく席を立つね。と言いたそうな他の乗客たちの視線を感じる。
そんなこと言ったって、生理現象だからしょうがないじゃないか。
大人一人がやっと入れる小さな狭いトイレにやっとたどり着いた。
立ちながら用を足すと確実にあちこちに飛び散ってしまうので、仕方なく汚ない便座に座った。これでしっかり狙いが定まって、便器の中におしっこが飛んでいくがお尻を何度も強打してしまった。これがなかなか痛い。
用を足すと、また席に掴まりながらゆっくりと自分の席に戻っていった。
ということを、あと2セットは繰り返した。お酒を飲んで一度トイレに行くと、尿意止まりませんよね?笑
最悪なタイミングでトイレスイッチがオンになってしまったのだった。
尿意と格闘しているうちに、いつの間にか島が見えてきた。レンボンガン島だ。
ビーチでボートを停めて、また少し海に浸かってから島へ上陸した。
軽トラに屋根をつけたような相乗りのタクシー? 路線バス? みたいなやつに欧米系の人たちと一緒に乗ってホテルに向かった。
軽トラが走り出すと、またもやガタゴトお尻に衝撃が伝わり始めた。
この島、舗装されている道がほとんどなく、しかも、さっきまで雨が降っていたみたいで道が道ではない。
さっきからお尻に衝撃ばかり受けて、お尻の形が変形しないか心配になってしまう。笑
10分程で軽トラが止まって、オレたちは何もない広場に降ろされた。
運転手にホテルの場所を聞くと、広場のすぐそばの通りから見える海の方を指さして去っていった。
海岸沿いを歩いていくとすぐにホテルに到着。
今回はドミトリーではなく、別々の部屋が別れた。
1階のツインルームにマルセロと妹のビアンカ。
2階の2段ベッド2つ、シングルベッドが2つある部屋に、オレとリッキーとゆうやが入った。
荷物を部屋に運んでいると、スタッフがおしゃれなグラスに入れたココナッツジュースを運んできた。
ん、ルームサービスなんか頼んでないけど、新手の金稼ぎか?と思っていたが
「ウェルカムドリンクです。ごゆっくりお過ごしください」
スタッフは笑顔でそういうと去っていってしまった。
わお、すごいおもてなし! 気に入った!
ココナッツジュースもウマいし言うことなし。この島を好きになりそうだ。
がしかし、レンボンガン島でもとんでもことが次々と起こってしまうのだった。笑
このときはまだ知る由もなかった・・・。