サイトアイコン ユウマのドキドキ、ワクワク大冒険記

第66話 逆ナン

 

 

悪魔の暴走も止まり、僕たちはウルワツで有名な「シングルフィン」というカフェバーに向かった。

 

シングルフィンの駐輪場にはスクーターがぎっしりと停められていた。間違いなくカフェバーの客のものだろう。

ということは、みな飲酒運転で帰るのだろう。バリでは飲酒運転が当たり前のように感じるのだが、罰則はないのだろうか。それともただ、飲酒運転、みんなでやれば怖くない的なノリなのだろうか。

まったくもって謎である。

 

 

僕たちはどうにか駐輪スペースを見つけてスクーターを停めた。

クラブのように入場料を取られることなくすんなりと中に入れたのだが、僕が期待していたクラブのような賑わっている感じはない。

期待していただけに、僕はがっがりしながら建物の奥の方へと進んだ。

 

 

テラス席に出ると、崖に突き落とされた僕の感情は、さっきの期待をはるかに超えて天に届く勢いで舞い上がった。

 

目の前には、20、30代の白人観光客たちで溢れかえっていた。曲が流れてクラブのように踊っている人たちもたくさんいる。もちろん、その中で僕の目に映るのは、金髪のお姉さんたちだけである。男どもはすっこんでろやい。

 

しかし、何がすごいかというと、シングルフィンは崖の上に建てられたカフェバーで、目の前には海が広がっている。

あとから調べたのだが、シングルフィンは綺麗な夕日が見られるということで観光客に大人気だそうだ。

 

ブラジル人どもがセール中の服屋さんで足を止めなければ、ギリギリ間に合っていたかもしれない。オレはバリに「I ♡ BALI」と書かれて夕日がデザインしたTシャツを見に来たのではない。本物が見たいんだよ。

まあ、美人の金髪お姉さんたちがわんさかいる時間帯に来れたので、良しとしようではないか。

 

 

僕たちは隅っこに陣取り、マルセロたちを残して、僕はリッキーとゆうやとともに、飲み物を買いにカウンターへ向かった。

カウンターに人が多すぎて、なかなかドリンクを頼むことができない。順番などあってないようなもので、僕の番かと思いきや、別のやつが大声でバーテンダーを呼ぶと、バーテンダーはそいつの対応を始めるではないか。

殺意が芽生えた瞬間である。

 

周りはみな180センチは超えているであろう巨人たち。165センチにも満たない僕は、バーテンダーの視界に入ってないことに気づいた。そう、バーテンダーにとって僕は透明人間なのである。

 

この状況でバーテンダーにうまく注文するには、自分の存在をアピールしないといけない。

オレ、ここにいるよ!!!

僕は叫んだ。心の中で。

 

ーーーこら、オレ。声を張らんかい。過去のブラジルやカナダでの生活で自己主張の大切さを学んだのを忘れたのか。ーーー

 

僕は、日本でテーブルの呼びだしボタンではなく、店員さんに直接声をかけるパターンが苦手だ。

今のバーテンダーの忙しい状況をみると、他の曲の飲み物を準備している状況で呼ぶと迷惑しないだろうかと考えて、なかなか声をかけるタイミングがつかめない。

バーテンダーが客に飲み物を渡し終わって、さあ注文を聞こうかというタイミングを待つのだが、一向にその瞬間が訪れない。

なぜなら、他のやつらはバーテンダーの状態に関係なく、自分のタイミングで声をかけ注文しているので、一生僕の番にならないのである。

 

そんな中、自分のドリンクを手に入れたリッキーが目の前を通り過ぎていった。死ねばいいのに。もちろん冗談である。

本当に死なれては、私のライディングの師匠がいなくなるから困る。このバリの旅の間に師匠を超えるという目標もあるのだ。

 

 

自分を変えなければならない時が来た。バーテンダーに共感を示していては、僕は一生ドリンクを注文することができない。

僕は心を鬼にして声を張った。注文は成功した。ようやく僕とゆうやのドリンクをゲットした。(下の4秒の動画をご覧ください。)

 

 

 

 

僕のレベルが上がった・・・気がしたのだが、バーテンダーの迷惑なタイミングで注文したのではないだろうかと思うと、現状維持のようだ。むしろ、その事が気になってメンタルにダメージを受けたので瀕死状態である。

 

 

みんなの元へ戻った。周りは99%が白人で残りの1%が僕とゆうやで締めているであろう。まだアジア人には知られていないのか、全然アジア系を見かけない。

ということは、僕にとってチャンスである。珍しい日本人に興味を持ったお姉さんが、僕に声をかけてくるかもしれない。

 

いわゆる逆ナンというやつである。

 

あまり声を大にして言えないんですけど、

ほら、外国人と付き合ってる、もしくは結婚した日本人女性の中には、お世辞にも美人と言えない人たちがいるじゃないですか。

あれは、男性の周りに比較対象となる他の日本人女性がいないから、その人にとっては美人に見えるという仕組みですよね。もちろん、性格がいいとか体の相性がいいなどの別の理由もありますけどね。

つまり、日本では絶対にイケメンの部類に入らない僕でも、アジア人1%の今のこの状況では、金髪お姉さんたちにとってのイケメンになり得るのである。

 

勝ったな。

 

と思ったのだが、僕の隣には、ウブドでもイケメンオーラが溢れ出し(第45話 DJガール)、今もイケメンオーラでギンギンに輝いているゆうやがいる。永遠に勝つことができない比較対象がすぐ横にいるではないか。オワタ。

さらに、165センチにも満たない僕が、ほとんどが自分よりも背の高い女性たちの視界に入らない事に気がついた。彼女たちに気づいてもらうには、ジャンプし続ければならないのだろうか。却下だ。

 

 

 

 

その後、雑談が苦手な僕はあまりグループの会話にも入れず、周りの美人たちを観察することに徹した。美人たちを観察していると、少しずつメンタルが回復してきたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

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