愛よりも昔、孤悲(こい)のものがたり。
先日観た映画『言の葉の庭』の小説版を読んでみました。
色彩豊かに鮮やかな映像で表現された映画に対して、同じストーリーを『言葉』を使ってどのように展開していくのだろう、と読む前からワクワクする作品でした。
小説版では、映画ではあまりスポットライトの当たらなかった脇役たちにもスポットライトが当てられ、絶妙な描写によって表現された彼らの過去や心境とともに、それぞれの視点から物語が進んでいきます。
映像では表現できない、新海さんの巧みな言葉のチョイスによって表現された趣のある情景や、思わず同情したくなるキャラクターの心境。
目を閉じると私の頭の中にその情景が現れ、嬉しさや悲しさなど、それぞれのキャラクターのいろいろな感情が、じんわりと心の中に広がっていくのを感じました。
大切な何かを失ってしまうことを恐れて、頭ではわかっているのに口から発した言葉は、自分の本当の気持ちと反した言葉。その言葉が相手を傷つけてしまう。
人は外見上、恋人や家族、友達と繋がっているように見えて、心のどこかで孤独を抱えて生きているのかもしれない。
新しいゲーム機を与えられた子どものように、新海ワールドにどっぷりとハマってしまいました。
映像では表しきれない、言葉ならではの表現の数々。言葉ってすごいな。使い方次第で汚くもなるし、美しくもなる。
さて次は、新海誠さんのどの世界にお邪魔しようかな。