数年前に半年間ブラジルを放浪していたときに、カナダのバンクーバーでワーホリで住んでいたときに仲良くなった友達を訪ねて、ブラジル南部のポルトアレグレという街にある彼の家に泊めてもらっていたときのことである。
その友達と彼の友達数人でウルグアイに数日間旅行して、楽しんで満足して帰って来たときに事件はすでに起きていた。
ゲスト用のベッドルームを使わせてもらっていた私は、自分の荷物を全て置いて大切に保管していた。その中には、友達の父親から旅行出発前にもらった高級チョコレートセットもあった。ウルグアイ旅行から帰ったらゆっくり食べようと思っていたのだ。
さっそく部屋に入ってチョコにありつこうとしたのだが、ない。そこにあるはずの MY SWEET HEART !! 私の大切なチョコがない!!
16個あったはずのチョコたちが、パッケージだけ残してすべて包み紙ごと消えている。
なぜだ。なんという怪奇現象だ。
自分がア然としていると、友達が友達の母親を疑って問い詰めた。
しかし、本人は知らないと言う。
さては、とぼけているな。これは。食欲を抑えきれずに食べちゃったんだろ。お母さん。
と、ふくよかな友達の母親を、しょうがないんだからという眼差しで私は見つめがらも許すことにした。
それでも、しばらく家は嫌悪ムードに陥ってしまった。
友達は母親の悪事に失望したようだが、私はあまり引きずらない性格なので、すぐに気持ちを切り替えていた。
翌日、泊めてもらっている代わりに私の仕事となっていた友達のポッチャリ犬の散歩をするために、犬を連れて外へ出た。
途中、犬がいつものお決まりの場所でウンチをし始めた。
しょうがないな、早く済ませるんだぞーと思いながら、私はビニール袋を広げてウンチを回収する準備に取り掛かった。
犬が用を足して、ウンチを回収しようとした瞬間だった。ウンチに紛れて何やらキラキラ光っている。
あ!!!!! 銀紙!!!! チョコの銀紙!!!
ウンチには、昨晩消えたはずのチョコの銀紙が混ざっていた。
お、おま、おまえ、おまえか!!! おまえが犯人か!!!
こいつ、とぼけた顔してオレの楽しみを奪ったな。サイコパスか!!
しかも、ウンチをし終わった犬のお尻の穴を見ると……穴から銀紙がヒョコッと半分だけ、かわいく顔を出している。
もう、散歩の途中でひとりで腹を抱えて笑ってしまった。周りの人におかしな目で見られたが、笑いが止まらない。
家に帰って友達と友達の母親に、深刻な表情ですべて報告すると、家は一瞬にして、どっと笑いに包まれた。
ようやく友達の母親の疑いも晴れましたとさ。めでたし。めでたし。
あ、ちゃんとティッシュで犬のお尻の穴から銀紙を引っ張り出してあげましたよ。シュルシュルっと。
切れ痔にはならなかったのでご安心を。
彼女の名はプッカ。残念ながら去年亡くなってしまったようです。
お悔やみ申し上げます。
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