それは、ある日曜の昼下がりのできごと。私が車を運転していて、交通量の多い沖縄の国道58号線の左側の車線で信号待ちをしているときだった。
突然、誰かが車の窓をノックしてきた。
信号待ちで車の窓をノックする。それは、ブラジルに住んだことがあるオレが、ブラジル人の友達から何度も聞いたブラジルでの強盗のパターンのひとつである。
ブラジルでは、夜の人通りが少ない都会の道では、赤信号は無視して通り過ぎた方が安全だと友人から教わった。
そんなオレが、車の助手席側の窓をノックされて反射的に頭に思い浮かぶのは、間違いなく強盗だ。
不意をつかれたオレがビクッとして、窓の外を見てみると、中学生くらいの男が3人窓の外に立っていた。恐る恐る少しだけ窓を開けてみた。
「乗せてくれませんか?」とひとりの男が声をかけてきた。なんだ、ヒッチハイクかい!!!
「どこまで?」と、びっくりしたことがバレないように、オレは平常心を装って尋ねてみた。彼らの目的地は現在地から車で約5分のところ。通り道だし、まあいっかと思い、「乗っていいよ」と応えて、信号が変わる前にさっさと3人を車に載せた。
歩いてもそんなに遠くない距離をなぜ歩かない。と、あとから思ったのは内緒のはなし。そんなことよりも、ヒッチハイカーを乗せることの好奇心のほうが勝ったのだった。
信号が変わり、車を発信しながら3人と話し始めると、ボーリングして遊んだ帰りでバス賃がなくて、ヒッチハイクにチャレンジしたことがわかった。どうやらオレが、乗せてくれるか尋ねた1人目のドライバーらしい。1発目で成功かい! それに、窓をノックして話しかけるとは、なんとも効率のいいヒッチハイクの方法かと思いました。
ヒッチハイカーは通常、行き先を書いたボードを持ったり、単に突っ立ってドライバーに合図を送って停まってもらうという方法をとる。例外なく、私も日本やブラジルでヒッチハイクをしたときは、ドラゴンボールのベジータTシャツを来て目立つようにして、ドライバーにアピールしていた。ドライバーが泊まってくれるまで長い時間を要した。オレが今度ヒッチハイクするときに真似してみようかな。
初めてのヒッチハイクチャレンジを一発で成功したことと、彼らのチャレンジ精神を褒めておきました。中学生がヒッチハイクするとは、将来おもしろいやつらになるかもしれない。少しでも彼らの刺激になればと思い、オレがブラジルでヒッチハイクした体験談を語ってやりました。
彼らは最近、ずっと受験勉強で退屈していて気分転換にボーリングしてきたとのことで、ついでにちょっと楽しんでもらおうと、オレからひとつエンターテイメントを提供してやりました。
軽自動車ながらMT車のオレの車だからできること。信号待ちで3千回転キープして、信号が青になると同時にクラッチミート。モータースポーツのゼロヨンのように、制限族度いっぱいまで勢いよく加速して、ジェットコースターのようなアトラクションを少しだけプレゼント。彼らも少し楽しんだようだ。
すぐに目的地に到着して、彼らは車から降りた。
「ありがとうございました」
「受験勉強がんばれよー」
そう言ってオレは目的地へと向かった。一瞬の恐怖の体験から転じて、ちょっとしたおもしろいできごととなった昼下がりであった。