まだ人々で賑わっているバーをあとにして、ジョッタを送り届けるために駐輪場からバイクを出した。ジョッタをバイクの後ろに乗せて、ゆっくりとバイクを走らせた。
バリ島の街中を走るのとは違って、レンボンガン島では十分とは言えない明るさの街灯がちらほらあるだけで、道は薄暗くて草むらから今にも獣が出てきそうな怖さがある。それと同時に、後ろにジョッタがいることによる安心感もあった。
恐る恐る運転しながらジョッタの案内に従って、15分ほどすると、ジョッタの住むアパートに到着した。
ジョッタは、マリアナとサムのカップルとルームシェアをしていて、隣の部屋にはタイサも住んでいるようだ。今日はマルセロはここに泊まるんだな。笑
ジョッタを下ろして帰ろうとすると、
「ユウマ、ちょっと待って!」
どうやら、マリアナとサムはすでに眠っていて、運が悪いことにジョッタは鍵を忘れて入れない。
「オレたちの部屋のベッド余ってるからそこで寝れば?」
「うーん・・・わかった。そうする」
「おっけー。じゃあ帰ろう」
気を取り直して、オレたちはバイクに乗った。
ここで気がついたのだが、オレのiPhoneのバッテリーが切れて、グーグルマップが使えない。この真っ暗闇の中、ジョッタの土地勘だけが頼りだ。
「ジョッタ、任せたぞ!」
「アイアイサー」
1時間後・・・
まだホテルにたどり着けない。それにタイミング悪く尿意がオレの膀胱を襲う。
タイム! バイクを停めて、ジョッタから距離を取って見えないように草むらで立ち小便をしながら、ふと空を見上げてみた。
そこには、隙間を探すのが難しいほどに、数え切れないほどの星たちが夜空を埋め尽くしている。
あまりの星空の美しさに見とれて、しっこが止まったのに気づかずに一瞬立ち尽くしていたほどだ。
過去に一緒に過ごした女の子たちを思い浮かべながら、誰を連れてきたら一番楽しいかという妄想が始まって、用を足してもしばらくの間立ち尽くしていた。
我に返って、ジョッタの方に戻った。
「ジョッタ、めっちゃ星空が綺麗だね」
「そうね、何度見ても飽きないわ」
「迷子になって走り続けてなければ、星空に気づかずに寝てたね。
迷子にしてくれてありがとう!笑」
「褒めてるの? それとも皮肉ってるの?笑」
「どっちもだよ」
ふたりは再びバイクに乗り込んだ。バイクのメーターを見てみると、ガソリンがEゲージに近づいている。
そう長くは持たない。頼むぞジョッタ、しっかりとホテルまで導いてくれ。
1時間後・・・
まだホテルまでたどり着けない。と、諦めかけたときに見覚えのある道が見えてきた。
記憶を頼りに、あとは難なくホテルに到着。
結局、ジョッタを送り届けるだけの予定が、島を2周して夜のエキサイティングなツーリングに変わってしまったのでした。笑
ホテルの階段を上がって部屋に入ると、大きないびきが聞こえて、リッキーが爆睡しているのを確認できた。ゆうやも寝ている。
ふたりを起こさないように、物音を立てないように静かにジョッタをベッドまで案内して眠りについた。
迷子にならなければ、満天の星空を見たり、夜のレンボンガン島を一気に2周したりできなかっただろう。迷子になることで、さらにいろんな体験ができる。
これだから迷子はやめられない。笑
ジョッタ、ありがとう!!!