サイトアイコン ユウマのドキドキ、ワクワク大冒険記

第83話 理想と現実

 

 

ずっと動き回っていたので、のどが乾いてきた。

僕はとりあえずカウンターでビールを買って、一休みしようと座れる場所を探すことにした。

 

 

メインフロアを見下ろせる場所にいくつもソファが並べられていて、ゆっくりくつろげそうな場所を発見すると、僕は腰を下ろした。

しばしの間、休憩としようではないか、と思った矢先、6人の男女のグループが僕の元にやってきた。

 

 

「ゆうま、ここいにいたのか。女の子連れてきたから、この子と一緒に踊ったらどうだい」

よく見ると、男3人組はホステルで出会ったHEY3人衆だった。

 

 

今夜のワンチャンが起こる可能性が限りなくゼロに近づいていたこの状況で、バリの神様は僕を見捨ててはいなかった。

バリの神様は、これまでに数々の試練を僕に与えた。そのすべての試練を乗り越えた僕に、バリ人女性というとびっきりのご褒美を用意していたのだ。

 

 

お酒のせいか、彼女がものすごく美人に見える。周りの白人の金髪姉ちゃんたちなんか取るに足らない・・・とまでは言い難いが、金髪姉ちゃんに匹敵するほどだ。

ダンスで彼女と打ち解けて、そのままの流れであんなことやこんなことまで、というのが理想だろう。

 

 

僕は今夜の最大の目的を達成するために、周りの人に与える影響があまりに強すぎて、普段は誰にも見せない僕の「究極奥義」を使うことにした。

中学の時に覚えたEXILEの「Choo Choo TRAIN」の振り付けの一部を、自身を持ってみんなの前で披露した。

 

あまりのキレの良さにHEY3人衆も女の子たちも拍手してくれた。特に紹介してくれた女の子の反応が上々だ。

 

 

日常でスポットライトを浴びることなど皆無な僕なので、気持ちが高揚した。本当は僕はスターだったのか。何かの手違いでこれまでの人生で才能を発揮できてなかったが、ついに芽を出したか。遅いぞ、芽。

 

 

こいつらだけに披露していてはもったいない。僕の才能は世に広く知れ渡るべきだ。手始めにこのフロアの人たちだ。

僕が唯一覚えている「Choo Choo TRAIN」の振り付けの一部を延々と繰り返しながら、徐々に移動していった。

僕に気づいた人たちが拍手で迎えてくれる。

 

 

しばらくお酒と自分の才能に酔いしれていたが、ふと我に返りHEY3人衆の元に戻った。しかし、彼らはすでにいなくなっていた。僕は今夜最大のチャンスを逃したのか。いや、まだチャンスはあるはずだ、そう願いたい。

 

 

その後、僕はクラブ内を歩き回ったが、人々は徐々にいなくなっていた。時計を見ると5時を回ろうとしている。いつの間にか新年を迎えていたようだ。

今まで気づかないふりをしていたが、体がクタクタだ。少し頭痛もする。

 

 

よし、帰ろう。

 

 

僕は疲れた体に鞭打って、もう一度クラブ内を歩き回ってリッキーを探した。

リッキー先程別れたステージで見つけた。どうやらずっと踊っていたようだ。たくさんお酒を飲んでたくさん踊ったリッキーも疲れ切ってひどい顔をしている。

 

 

リッキーが僕に気づいて一言。

「うん、帰ろう」

僕はコクリとうなずいた。

 

 

僕たちは肩を組んで出口へと向かった。約6時間もスカイガーデンにいたようで、足が棒のようだ。階段の上り下りもままならない。

あれだけ意気込んで突入したスカイガーデンであったが、ふたりとも収穫ゼロである。残ったのは圧倒的な疲労感と頭痛だけ。この時間はいったいなんだったのだろうか。

僕が沖縄でナイトクラブに行った際に毎回思うことを、ここバリでも感じたのであった。

 

 

外へ出ると、酔っ払った人たちが通りを歩いていた。沖縄のクラブ閉店後に見られるお馴染みの光景だ。

なんだかなあ。僕が求めていたものと違う。

 

僕が求めていたものは、金髪のお姉さんやラテン系のボン・キュッ・ボンのお姉さんたちと仲良くなって、みんなでテキーラのショットを飲みながら、あなた、お目々がエキゾチックでかわいいわねタイプだわ、このあと私の部屋来る、みたいなこととかである。

それが、今となりにいるのは、クマのプーさんのようなブラジル人の男リッキーである。

 

 

周りの酔っ払った人々の幸せそうな顔を見て、人生の意味について深く、深く考えながら僕はリッキーと宿へと歩き出した。

なお、僕の人生についての深い話は、あまりにも深すぎて、まだ時代が追いついてなくて世間に衝撃を与える可能性大なので、公表するのは控えさせていただく。

 

 

 

 

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