第69話 ビンビンビーチじゃないよ、ビンギンビーチだよ
僕たちはウルワツで有名なビンギンビーチに来た。
僕がビンビンビーチと聞き違えて、なるほど、ヌーディストビーチか。と勘違いしてテンションが上ったことは想像に難くないであろう。
直射日光でシートが熱くならないように、今度はしっかりとスクーターを日陰に停めてビーチへ向かった。
ビンギンビーチは駐輪場から少し離れていた。
迷路のような細い路地を通り抜け、急勾配の階段を下りていきやっとビーチに辿り着いた。
下りてきた道を見上げると、たくさんの住宅やヴィラ、飲食店が丘にズラッと立ち並んでいるのがわかる。ビーチの両サイドは断崖絶壁の崖になっていて、ビーチのあちこちで大きな岩があらわになっている。
最前列のビーチに近い建物のほとんどが飲食店で、満潮時の波対策なのか、すべてが高床式倉庫のような作りになっていた。
僕たちは先に高床式倉庫カフェでランチを済ませ、その建物下の日陰に陣取りおなじみのビンタンビールで乾杯した。
マルセロが自慢のBluetoothスピーカーでガンガンに曲を流し始める。ビーチと音楽、そしてビール、最高の組み合わせだ。やっぱり訂正する。これにバーベキューがあればベストだ。
僕はふと見上げた。よく見ると、建物がけっこう古い木造であることに気づき、いくらハプニング続きのオレでも、まさか倒壊しないよなと思った。
だらけきった僕たちのように、時間がゆっくりと流れていった。
だらけきった僕たちのもとに、たくさんのサングラスを発泡スチロールにぶっ刺して運んでいるおじさんが現れた。おじさん自身もいかしたサングラスをかけている。
予想通り、おじさんはサングラスを売ろうとしてきた。
全く興味のない僕はぼーっと眺めていたのだが、マルセロとリッキーが興味を示した。
ふたりはひとつずつ試着して、スマホのカメラで似合っているか確認していった。そのペースが早すぎて、おじさんがサングラスを戻すのにあたふたしている。そのくせしてサングラスで無表情に見えるのがなんだか笑える。
結局ふたりは、値引き交渉に成功してひとつずつサングラスを手に入れた。
ビールを飲みほして昼ごはんも消化したころ、僕とマルセロとリッキーはサーフィンすることにした。
ビンギンビーチではサーフボードが1時間500円ほどでレンタルできる。さらにお金を払えばインストラクターをつけてレッスンを受けられるのだが、満場一致でその分のお金はビール代に回したほうがいいとなってインストラクターなしとなった。
すでにひとつあるくせに、ふたつめのサングラスを買ったお前らがそれを言うなと内心思ったが、黙っておくことにした。
そのタイミングでゆうやもビーチに到着したのだが、サーフィンよりもだらけモードを選んで座り込んだ。
僕たちサーファーはボードを持って海へ出た。
この中でいちばん様になっているのが僕なのは言うまでもないが、サーフィン初挑戦であることは言っておこう(マルセロとリッキーは多少の経験あり)。
テレビや映画に出てくるサーファーがうまく大波を乗りこなすイメージを実践したらうまく波に乗れるだろう。センスの塊としか言いようがない私なのだから、1時間以内にうまく波に乗れるようになるなどなんと容易いことか。
自信に満ち溢れた僕がこのあとどんな目に遭うかは、このときはまだ知る由もなかったのである。
つづく。
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