クレイジーハロウィン第3話 クレイジーなハロウィン前夜祭
- 2018.10.01
- 短編集
日本人、韓国人、アメリカ人が混ざった総勢9名で韓国焼き肉サムギョプサルを食べて、メクチュ(ビール)とソジュ(焼酎)で何度も乾杯。オレが想像していた以上の盛り上がりを見せる。頭から『ベジータでハグ』での失敗のことなど一気に吹き飛んだ。
途中、トイレのために席を立つと同時にメッセージが入った。
「今から帰るところだけど、ちょっとだけ会える?」
ウチの民泊に泊まりに来て友達になった女子大生のダヒェだった。食事に参加する時間はないけれど、少しでもオレに会いたいと連絡をくれた。
焼肉屋さんの場所を彼女に知らせると、これからこちらへ向かうとのこと。席に戻って彼女からの連絡を待ちながら、ソジュをぐびっと流し込んだ。お酒が入らずとも騒がしかったみんなが、お酒がまわってさらに騒がしくなっている。他愛もない会話でみんなで笑っている時に、再びダヒェからのメッセージがきた。
「ついたよ!」
「わかった。今行く!」
みんなに少し外に出てすぐに帰ってくることを告げて、焼肉屋さんの階段を一気に駆け下りた。すると、すぐそこにダヒェは立っていた。ふたりとも顔を見合わせて、すぐに笑顔になり、再会を喜んで抱擁を交わした。
「久しぶり。元気だった? 忙しいのにここまで来てくれてありがとう。会えてめっちゃ嬉しい」
「せっかくゆうまが韓国に来てくれたから、少しでも会いたくて来たよ」
それから数分ほど、お互いの近況報告をした。
「もう電車に乗るから行かなきゃ」
「うん。また韓国来るからね。次は観光案内よろしく」
そう言って束の間の再会の時間を終えて、彼女は手を振って帰っていった。ほんの10分ほどだったが、なんだかとても嬉しい気持ちになった。その余韻を感じながらオレは、焼肉屋さんへ戻った。
それからもガツガツ食べて、グビグビ飲んで、まだまだ食事会は終わらないようだった。
そんな時にもうひとりの韓国人の友達、オレに泊まるところを教えてくれたヒェジュンからメッセージが来て、これからオレたちと合流するとのこと。そのことをエイミーに告げると、むやみやたらに友達を誘い過ぎだと少し怒られた。笑
もう席が足りない。
すでに十分に飲み食いしていたオレたちは、そろそろ店を出て別の場所へ移ろうかと考えていた。そんな時に、ヒェジュンが到着したのだった。みんなにヒェジュンを紹介したが、盛り上がりすぎてほとんど誰も聞いてない。もう会計が終わっていたので、ヒェジュンには残ったお肉を少し分けて、少ししてからオレたちは店を出た。
もともと予定のあったアイリ率いる日本人軍団は、ここで分かれて別行動となった。またあとで連絡すると言って分かれた。他のメンバーのあまりのキャラの強さに、オレを除く日本人メンバーは気圧されているようだった。それがなければ予定をキャンセルして、そのまま一緒に行動していたかもしれない。
お酒が入ってだいぶ陽気になっているオレたちは、近くにあるたくさん人が集まっている公園に移動した。すぐそばのコンビニで、1リッター弱のペットボトルに入った韓国のお酒マッコリを先に購入した。ひとり1本ずつマッコリを携えて公園に来た。
公園では、小さなダンスバトルのイベントが行われているらしく、公園の中央をたくさんの人が囲って、その中でいろんなグループが順番よくダンスを披露している。しばらくダンスを見ていたオレたちだが、すぐにその場を離れて動き出した。ここでオレたちグループに共通する点が、少なくとも一つは明らかになった。それは、『見てるより行動する派』ということ。
公園の中心の人だかりから離れて、エイミーの友達の韓国人のスーハンが言った。
「よし、オレたちもダンスバトルしよう。じゃんけんで負けたやつが先にダンスを披露するぞ。じゃーんけーん、ぽん」
そう、先に言いだした人が負けるという流れはこのときは、当てはまらなかった。負けたのはオレ。笑
絶対に負けないだろうと思っていたのに、全員がパーを出した中でオレだけグー。仕方ないのでお酒の勢いでやるしかない。マッコリをさらにグビッと飲んで、酔拳のふりをして、その場のフィーリングで1分ほど踊った。やりきった!
思い切りの良さからか、お世辞にも上手と言えないオレのダンスに、みんなが拍手を送っている。
次のダンサーを決めるために再びじゃんけんをする。じゃんけんぽん。今度こそオレは勝って、負けたのはエイミーの相棒のアリサ。恥ずかしがっているアリサに、みんながやれやれと声をかける。アリサも仕方なくみんなの前に立つ。
すると、アリサはバレエを踊り始めた。手足をしなやかに使ってうまく表現している。オォッと一気にみんなが盛り上がる。アリサのバレエが終わると、周りで見ていたオレたち以外の人も一斉に拍手して、アリサを讃えた。気がつけば、さらに数人が、オレたちの輪に入ってダンスバトルに参加している。もはやオレたちだけの個人的なお遊びではなくなっていた。
それからもちょっとずつ人数は増えて、いつの間にか20人ほどのダンスバトルになっていた。ダンスのうまさよりも、いかに自分流で表現するかという勝負になっていた。
今夜のオレたちには、人を引きつける何か特別な力が備わっているような錯覚に陥るのだった。
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