クレイジーハロウィン第9話 ベジータ+スクリーム=ベジリーム!?

クレイジーハロウィン第9話 ベジータ+スクリーム=ベジリーム!?

 

 

店の目の前の路地にもガンガンに響く音楽の中、映画に出てきそうな、インディアンとカントリー娘を思わせるような、クラシックな服装をした白人のお姉さんに手を引かれ、音楽に合わせて踊り始めた。まるで、「アルプスの少女ハイジ」のオープニング曲で踊るペーターとハイジのように、ふたりで腕を組んで回った。白人のお姉さんだけでなく、韓国人であろう女性も踊っていて、腕を組んで一周回ると次の女性と入れ替わって踊り、次は反対に回ってかわるがわるに踊った。

 

 

 

今夜のハロウィンには、魔法のように、人々をフレンドリーにする効果があるらしく、路地を通っていく人たちもタイミングよくダンスに加わり、一緒に腕を組んで踊って、自然と溢れんばかりの素敵な笑顔になって通り過ぎていった。ダンスを通して、不思議な一体感が生まれているのだった。

 

 

 

白人のお姉さんは、曲が終わると休憩とばかりに、外のテーブルに置いていたジョッキを取って、ビールをグビグビと飲み始めた。オレもつられて、今のうちに休憩しなきゃ、とビールを飲んだ。オレたちのダンスを近くに座って見守っていたハンを誘ってみたが、恥ずかしがっているのか、クールな表情で断られた。

 

 

 

いっぽうエイミーとジンは、「ボブの絵画教室」でお馴染みの、といってもだいぶ昔の番組なのだが、ボブに扮した男性と楽しくバーの扉にお絵かきしているのだった。

 

エイミーのはしゃぎようといったら、無垢な子供のようで、見ているこっちまで楽しくなってくる。夢中になっているようだから、しばらくはそっとしておいてあげよう。

 

 

 

路地では、ビール休憩が終わると、再びダンスが始まった。しばらくダンスをしていると、やけに目立つ全身黒ずくめに、大きく口を開けた白いお面をかぶった人がこちらへ向かってきた。そう、スクリームである。彼は完璧にキャラになりきっていて、オレたちに襲いかかってきた。欲を言えば、ナイフがあれば完璧なのだが。

とここで、ドラゴンボールといえば、悟飯とトランクスがゴテンクスになる『フュージョン』という技を思い出した。もし、ベジータとスクリームがフュージョンしたら、どんなキャラクターが生まれるのだろうか、という好奇心が出てきた。最強の邪悪なキャラクターが生まれるに違いない。ということで、いざ、フュージョン!!

 

もちろん、何も起こるはずありませんけども。笑 想像力が思いっきり刺激されたことは確かだ。周りで見ていた通行人やバーの他の客も、笑いながらふたりのフュージョンの写真を撮っていた。

ちなみに、ベジータとスクリームだから、フュージョン後の名前は、『ベジリーム』でいいでしょうか。

 

 

 

スクリームはとうとう素顔を明かさずに、笑いながら去っていった。

まだまだハロウィンナイトは終わらない。

再びビールを補給したオレは、気がつけば、アルコールとコスチュームが相まって、いつもの何倍も開放的になっていた。そこへ、店舗のいいロックな曲が流れて、オレを更に勢いづけた。

 

 

 

ロックな曲に合わせて、激しいダンスを始め、例外なく路地を通り過ぎていく人たち全員と「ハイタッチ」を交わした。

「ハイ、ファーイブ(英語でハイタッチのこと」

と叫んで手を差し出すと、たくさんの人がノリよく、笑顔で手を合わせてきた。

100人以上とハイタッチしただろう。人が生涯でするであろうハイタッチの数を、ほんの1時間で超えた。

路地を抜けようとする、徐行運転のオープンカーのカップルにも例外なく手を差し出すと、ノリよくハイタッチしてくれたのだった。

 

 

 

ハイタッチに飽きたオレは、坂道から上がってくる5、6人のグループを見つけると、まず、彼らと目合わせて手を振った。それからゆっくりとボーリングの構えをして、勢いよくボールを転がすふりをした。再び彼らと目を合わせ、ジェスチャーで「倒れろ」と合図を送ると、彼らはノリよくバタバタと倒れてくれた。

それを見ていた周りの人たちも、最初は、こいつはいったい何をしているんだ、とでもいいたげに首をかしげていたが、人々が倒れると、意図を理解したようで、声を出して笑っていた。

 

 

 

小さな路地に集まった人々が、肌の色や言葉など関係なしに、一緒に笑い合っているこの瞬間、なんとも心地よい不思議な一体感が生まれていた。

言葉を話さずとも、動きや顔で人は笑わせられる、そんな結論に至った瞬間でもあった。自分が楽しむことによって、周りの人も楽しめる、素敵な体験をしてることを、酔っ払いながらも心で感じていた。