第20話 インフィニティプール
マルセロがレストランで合流して、待ちに待ったドリームビーチでのランチが始まった。
それぞれが注文した直後、マルセロが来る前から怪しくなっていた雲行きが、待ってましたとばかりに活動を開始。
小雨が降り始めたと思ったら、あっという間に目の前の綺麗なオーシャンビューを遮るほどの大雨に変わる。
単に大雨が降るだけではなく、強い風も吹き付けてきた。
屋根付きレストランといえど、屋根の端っこ側に座っていた我々含む他の客たちにも、大雨が押し寄せてくる。
災害時の人々の団結力が垣間見える瞬間に出くわしたのだった。
店員だけでなく店内の中央に座っていた他の客も協力して、みんなでテーブルや椅子を雨のあたらない店内の中央に席を移動した。
席を移動したあとはしばらく、ほとんどの客が雨の凄まじさをぼんやりと眺めているのだった。
そんな豪雨に囲まれてのランチもたまには悪くない。
ランチを食べ終わる頃には雨は止み、再び青空が戻ってきた。バリ特有の天気には慣れたが、なんとも気まぐれなのだろう。
ランチのあとはドリームビーチのもう一つの名物、インフィニティプールと呼ばれるプールと海の境目がわからない夢のようなプールのあるカフェパンダンに移動。
階段を上がってカフェに入るとすぐに例のインフィニティプールが目につく。
オレたちはプールのすぐそばの席を取って、さっそくドリンクの注文をする。
午後4時から6時はハッピーアワーになっていて、ドリンクを1つ購入でもうひとつもらえる。残念ながら2杯目も同じドリンクなのだが。
カウンターでこれまたおもしろい看板を発見したので、記録しておこう。
テキーラ! 今日あなたはトイレにハグしましたか?
テキーラショットを飲みすぎてトイレで吐きまくって、気がつくとトイレに抱きついて寝ていたというオチでしょう。
残念ながら私は未だに経験したことはありませんが、この看板が気に入りました。
ジントニックを2杯持って席に戻ると、マルセロとリッキーがビンタンビールを片手にすでにプールで浮かんでいる。
リアルブラジル人とニセブラジル人(オレ)の三人で記念写真。マルセロ先輩のおかげでバリ島に来ています。
それを見ていたジョッタが
「みんなで写真取りましょうよ。そうね、このハイビスカスでかわいく写りましょう」
ジョッタからみんなにハイビスカスが配られた。
男も女もハイビスカスをしっかりと耳にかけて記念写真。
今度は、ソフィーがオレに写真を撮ってくれないかと頼んできて、ソフィーのモデルタイム。
プールの端の壁に寝そべってポーズを決めるソフィー。さすが長身なだけあって、手足が長くてお美しい。
美女が浜辺に打ち上げられている。人工呼吸して助けなければ!
というストーリが思い浮かんでくる。
モデルになりきっていたソフィーに、突如リッキーが襲いかかってきた。
それから、心優しいリッキーはプールにいた幼い姉弟と仲良くなっていた。マルセロと共に姉弟にジャンプの仕方をレクチャーし始める。2段になっているプールの上段の方から何回か姉弟がジャンプしたあと、みんなでコラボして同時にジャンプをしてみる。
のはずが、弟だけ話を理解していなかったようで、一人だけ残ってしまうのだった。
そのあと、時間差で弟もジャンプする姿がなんとも可愛らしいくて、周りの人たちから拍手喝采をあびるのだった。
もしかしたら、最初からこうなることを企んでいたのかもしれない。だとしたら、末恐ろしい少年である。
「おい、ゆうま。一緒に飛ぼうよ!」
「わかった。やろう!」
リッキーに誘われてオレも跳ぶことになったのだが、完全に騙されたようだ。ひとりで跳んでなんとも寂しい思いをした。
ジャンプ大会の途中で、ソフィーが約束していた友達とのディナーに行くためにプールをあとにした。
それからもしばらく、『プールではしゃぐ大人と子ども』の絵は続く。
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