【強制収容所を擬似体験】夜と霧 ヴィクトール・E・フランクル
突然ですが、あなたの身に起こった人生で最も不幸なできごとを思い浮かべてみてください。
思い浮かべましたか?
ついてない出来事や人間関係などいろいろあると思いますが、第二次世界大戦中のユダヤ人たちが体験した強制収容所の生活よりかなりマシだと思います。
SNSの普及で「他人との比較」でメンタルを悪化させる現代社会ですが、他人と比較した方がいい場合もあります。
そのひとつが、あなたが不幸を体験してメンタルが落ちている時です。
本書には、精神科医で心理学者である著者のヴィクトール・フランクルが、実際に体験した第二次世界大戦中の強制収容所での超過酷な生活が心理学的な考察を交えながら赤裸々に綴られています。
これを擬似体験することにより、今自分が体験している不幸が著者の体験に比べたらちっぽけなものと感じるようになるはずです。
そして、著者が明かす『不幸のどん底でもうまく生き抜く方法』が学べるのです。
本書の中から僕が注目した以下の三点を述べていきます。
・人間の自己防衛本能
・それでも人は人
・解放後の罠
それではさっそく参りましょうか
人間の自己防衛本能
人間というものは「人」である前に「生物」であるので誰にでも生存本能があります。
つまりどんな危機的な状況に陥っても無意識に体が反応しますよね。
例えば、熱いものに手で触れた時に「無意識に」、瞬時に手を離す行為などがあります。
この自己防衛本能はメンタルも例外ではなく、DV彼氏となかなか別れられない女性が「彼は私がいないとダメなの」とか「私が悪いから殴られるんだわ」と思うようになるといった風に働きます。
では強制収容所に入れられた人たちにとっては、どういう風に自己防衛本能が働くのでしょうか?
それを知るためには、まずは彼らがどんな生活を強いられていたのか知らなければなりません。
彼らは突如強制収容所に連れていかれ番号を割り当てられます。そしてその番号だけの個人個人が持つ唯一のアイデンティティとなります。
それから毎日極寒の中で道路を作ったりといった過酷な肉体労働を行い、食事はほとんどの水のようなスープとパンのかけが与えられます。
夜はぎゅうぎゅう詰めで寒い中で眠ります。もちろん現代社会で重要だとわかってきた睡眠の質は最低レベルだったことでしょう。
これだけではなく、監視員のきまぐれによって殴られたり、体調が悪くなったり疲労で働けなくなった場合は「消毒だ」とガス室に送られるというプレッシャーもあります。
このような体験を長い間していると、人間の自己防衛本能が働き、次第に無感動になっていくそうです。
例えば、目の前で仲間が殺されて死体が転がっても動じない、監視員になぐられても動じない、つまり感情の喪失状態になるそうな。
そうすることによって怒りや悲しみによるエネルギーの浪費を防いで、生きるために省エネモードになります。
一番人間らしさを表現するのに必要な感情がなくなってしまうのです。なんということでしょう。
このように、人間は無意識のうちに思考や振る舞いを状況に応じて適正化しています。
それを明らかにしたのが、ノーベル経済学賞受賞者であるダニエル・カーネマンさんの「ファスト&スロー」なので、人間の不合理な思考に興味がある方は必読です。
それでも人は人
監視員は気まぐれで収容者をなぐったりすると先に述べましたが、もちろんみんながみんな、そうではありません。
中には、収容者にこっそり食料を分け与えたり、待遇の良いグループに割り振ったりしてくれる監視員もいました。
そういった行動をするのは、元々の人間性だったり、その収容者を気に入っているなど、普通の人間社会と同じ要因があります。
例えば、元々サイコパス性やサディズム性がある性格の持ち主なら、暴力を振るうことを楽しむし、元々思いやりのある人ならやさしく接しやすいなどがあります。
つまり、このような過酷な強制収容所の生活の中でも、結局は私たちは人間であることに変わりはないのでしょうね。
どんな状況に置かれても、どのように振る舞うかは結局ひとりひとりに委ねられているということです。
とはいえ、人間は社会的な生き物なので私たちが普段、どれだけ周りの人から影響を受けやすいかを知ると今後付き合うべき人間も変わって人生にも多大な影響を与えると思うので、「つながり 社会的ネットワークの驚くべき力」を読んでおくことをおすすめします。
もちろん、生まれつき攻撃的な人たちからの被害を最小限に抑えるためにも、サイコパスについて知っておくのもいいでしょうね。
解放後の罠
戦争が終わって強制収容所から無事に生還できたとしても、まだ安心してはいけません。
何年もの間、超過酷な生活を強いられていたので、自由になったという実感が湧くのもしばらく経ってからになります。
しかも、自由を実感し始めたとしても、それはあなたの人格を多少なり悪い方向に変えている可能性もあるのです。
著者が語るには、生還者の中には「今まで不幸のどん底を体験したんだから何をしても許される」と思って、多少なりの犯罪行為に走る者もいたそうです。
「ダイエット期間が終わったから好きなものを食べる」とは訳が違うのです。
そういった、ちょいどんでん返しがあるところが本書のおもしろいところでもあります。
あ、ネタバラシしちゃいましたね。ごめんなさい。
でもご安心ください。
あなたは僕の今から放つ一言で本書を読みたくてたまらなくなります。
今回の記事の渾身の一撃を食らえ。
『不幸のどん底でもうまく生き抜く方法』は本書を読んであなた自身で見つけてくださいね。
「不幸のどん底でも」というより、どんな状況においても結局は「それ」だと思います。
かなり価値の高い「それ」がこの本の中にはあるのです。それが著者が望んだわけでもないのに体験した世界一不幸なできごとの価値なのです。
ゆえに、「夜と霧」が人生で絶対読むべき名著であるのです。
この記事が少しでも多くの人が名著を読んでより良い人生を歩むキッカケになってくれれば幸いです。
あざしたー。
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