多良間島で本当にあった怖い話

多良間島で本当にあった怖い話

 

 

僕は基本的に、見えるものは見えるものとして、存在するものは存在するものとして信じるのですが、見たくないものがあります。それは幽霊です。だって怖いじゃん。

 

幽霊が苦手な僕は、中学生の時に「リング」や「呪怨」を見て以来、人生からホラー映画や怖い話を完全にシャットアウトしています。

 

唯一の例外は、20代前半の頃、「パラノーマル・アクティビティ」という映画が流行って、僕も好奇心から映画館に観に行ったことです。劇場の人たち全員が悲鳴を上げるほどの怖さで、もう絶対に、二度とホラーは観ないと心に誓いましたね。

 

幽霊の存在は科学的には否定されているのですが、存在するという前提で話を進めていくと、よく話題に上がるのが霊感があるか、ないかですよね。幸いにも、僕に霊感はありません。もし、見えていたら発狂してると思います。

 

 

話は変わるのですが、

僕はここ4年ほど、仕事で何度も多良間島という、沖縄の宮古島の隣にある人口約1100人の小さな島に行くことがありました。

 

毎回の滞在は短くても1週間、長くて1か月の滞在なので、仕事関係の人だけでなく、空港のスタッフさんやスーパーの店員さんと仲良くなって、一緒に飲みに行ったりするようになりました。

 

どんなにコミュ障でも何回も顔を合わせていれば、そりゃ慣れますよ。

 

 

仕事で多良間島に滞在していたある日の晩、僕は、仕事関係の人たちと居酒屋で飲んでいました(アルコール絶ちをしている僕はお茶飲んでましたけどね)。他のみんなはよく飲んで、お酒の力も相まって、話は大いに盛り上がっていました。

 

しかし、時計を見るとすでに夜12時を過ぎていました。

 

次の日のパフォーマンスは、前日にどれだけ良質な睡眠を取れたかで左右されるため、睡眠をとても大切にしている僕は、まだまだ話が長くなりそうだと思い、先に宿に帰ることにしました。

 

宿までは徒歩10分。しかし、多良間島は小さな島なので、信号機が1つあるだけで道にはほとんど街灯もなく、民家から漏れるわずかな明かりが道を心細く照らしています。

 

要するに、ほぼ真っ暗です。

 

そんな真っ暗な夜道を歩いていると、どこからともなく歌声が聞こえてくるわけですよ。

 

 

ここで多良間について補足しておくと、

多良間にはカラオケで歌えるお店が二、三あるのですが、一般的なカラオケのように個室があるわけではなく、民家を改装した居酒屋の中で歌うシステムです。(そのうちの一つはスナック)

つまり、多良間でカラオケをするには、他の客もいる前で歌わなければなりません。

 

良くも悪くも、島の人たちのほとんどが知り合いという小さなコミュニティだからこそ為せる技でしょうね。

 

僕も、ごくたまに参加する飲み会の二次会でカラオケに行くことがありますが、友達の前で歌うのは本当は嫌なんです。自分の車の中というホームでなければ、過度なプレッシャーで押し潰されてしまいそうです。

 

僕のカラオケに関する、みなさんに全く役に立たない情報まで補足してしまいましたね。

 

 

話を戻しますと、

 

カラオケの声が前方20メートルにある民家から来ているのだとわかり、みんな楽しんでるなあ、と思いながら僕は歩いていました。

帰り道にあるそのカラオケ居酒屋に近づいていくと、明らかにスピーカーからでないとわかる歌声が聞こえてきました。どうやら、僕にはわからない古い歌謡曲か何かのようでした。

 

僕は違和感を感じながらも、そのまま歩き続けました。

 

歩いていると、さらに、雨が降っているわけでもないのに、雨が葉っぱに当たっている音がしてきました。どうやら、その歌声と葉っぱの音は、カラオケ居酒屋の方向から聞こえているようでした。

 

僕は恐怖を感じながらも歩き続け、ついにカラオケ居酒屋の前を横切るところまで来てしまいました。

その瞬間、僕は左の方(カラオケ居酒屋の方)に人の気配を感じ、背筋がゾッとする感覚に襲われました。

 

冷静に考えると見るべきではないのですが、こういうときって見てしまいますよね。

 

はい、僕も見てしまいました。

 

カラオケ居酒屋の真っ暗な草むらの中には、男性が突っ立っていて、不気味な声で歌っていたのです。

 

あまりの恐怖に、僕はその男性を凝視した状態で動けなくなり、足を止めてしまいました。

 

 

日頃から新しい発見がないかと、周りのものを観察する習慣を持っていた僕は、ついに、霊感知スキル、霊可視化スキルまで獲得してしまったようだ。

 

 

きっとこの男性は生前、歌うことが大好きだったに違いありません。いつも民家から楽しそうな歌声が聞こえるので、このカラオケ居酒屋から離れられないのでしょう。

 

 

僕に気づいたその男は、不気味な声で僕にひと言こう言いました。

 

 

 

 

見たな。

 

 

 

僕はすぐに「す、すいません」と返しましたが、もう遅い。僕は見てしまったのだ。僕は呪い殺されてしまうんだ。そう思いましたね。

 

しかし、死ぬ直前だというのに、こんなときに僕の好奇心旺盛な性格が顔を出してきました。

 

せめて死ぬ前に、初めて実際に見る幽霊をもっと観察したい!

 

僕はさらにその男性を観察していました・・・。

 

 

すると、新しい発見があったのです。

 

 

その幽霊は・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

草むらで立ちションして気持ちよく歌っている、ただの酔っ払いのおっさんでした。

 

よくよく考えると、葉っぱの音はシッコによるもので、「見たな」と言われたのではなく「見るな」でしたね。立ちションしている人を凝視しているので、言われて当然です。

 

 

このことは、幽霊を見たときと同様に、見なかったことにします。

 

 

 

 

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