第7話 やつを追え!! 命がけの追跡劇

第7話 やつを追え!! 命がけの追跡劇

 

 

翌朝、兄のマルセロに起こされたビアンカと再会を果たした。と言っても2ヶ月ぶりくらい。

「ユウマー!! 久しぶり!! 元気??」

寝起きでも相変わらず元気なビアンカであった。

ブラジル流のあいさつでほっぺにキスをしてハグをした。

おてんばなビアンカが加わってオレたちグループのブラジル色はさらに強まった。

 

 

 

一階に降りるとリッキーがすでにプールで泳いでいた。

他のメンバーもさっそく水着に着替えてプールに入った。マルセロもリッキーも無邪気に勢いよく飛び込んで、辺りに激しく水しぶきが飛び散る。

 

 

 

性欲の塊の男だらけのプールに、長身で金髪のドイツ人女子大生ソフィーは獲物のようにやってきたのだっだ。

それから間もなくして、スロベニア人のタマラもワイワイガヤガヤにおびき寄せられてやってきた。

 

5分後・・・

 

リッキーとマルセロがソフィーとタマラとすぐに仲良くなって、いつの間にかリッキーはソフィーを肩車して、マルセロはタマラを肩車して騎馬戦が始まっていたのである。

こいつら・・・仲良くなるどころか美女を肩に載せている。羨ましすぎる!!

シャイな日本人のオレとゆうやは、プールサイドで羨ましそうに指をくわえて眺めているのだった。

それに身長が足りないオレが彼女たちを肩車しても、ギリギリ水面から顔が出なくで呼吸ができない。 チーン・・・。

 

 

 

こいつらのコミュ力高すぎ。とくに女の子に対して。

やはり男として、ソフィーとタマラとここで仲良くなっておかねばと思ったオレはどうにか自己紹介くらいは成功したのであった。他のハンター(マルセロとリッキー)の目もあってあまり長くは話せなかった。

 

 

 

2時間ほどプールで過ごしたオレたちは、ビーチで朝食を食べに行くことにした。

マルセロとリッキーがソフィーとタマラも誘って、特に予定のなかったソフィーも一緒に行くことになった。

 

 

 

 

オレが着替えるためにドミトリーに戻ると、若いイギリス人の女の子ジョーが出てくるところだった。

これはチャンス!! マルセロとリッキーみたいに仲良くなろう!!

ソフィーとタマラと話したときよりは話がはずんで、彼女がサッカー(イギリス風に言えばフットボール)

が好きであることがわかった。オレが近くのフットサル場を探す予定だから、その時に一緒にプレー

しに行くことを約束して彼女は出かけていった。しかも彼女は結構ノリ気だ。

高ポイント獲得!!笑

 

 

 

ビーチに行く支度を済まして、まずはホステルのレンタルバイクのレンタルを申し込む。

書類にサインしてパスポートを預けて、1日あたり500円ほどのレンタル料を払えば手続きが完了する。国際免許証の確認はないみたい。笑

 

 

 

それから駐輪場のバイクを各自で選ぶ。

ん、何やらオレのイメージしていたスクーターよりも少し大きい気がする・・・。

え、まじで!! 125ccなの!?

日本で原付きしか乗ったことないけど、オレ大丈夫かな。

 

 

 

ほかのバイクを見てもどれも同じような大きさ。かろうじて100ccがあるくらいだ。

いくら日本で原付スクーターを数回しか乗ったことがないバイクの免許を持たないオレでも、原付きスクーターより少し大きいエンジンなだけでゆるやかに加速したら大丈夫だろう。

 

 

 

おそらく運転できないであろうビアンカは、おとなしくマルセロの後ろに乗った。

ソフィーはリッキーの後ろへ、オレとゆうやは一人一台ずつ確保した。

一同はマルセロを先頭にしてビーチに向けて出発した。

 

 

 

出発した瞬間に問題は起きた。マルセロにはオレがバイク初心者であることを伝えたはずだが、やつら、明らかに手加減することなくアクセル全開で走っている。

ビアンカを後ろに載せて重くはなっているが、それでも初心者のオレからしたら早すぎる!!

 

 

やばい!! こっちもスピードを上げなきゃ置き去りにされる。

全開加速した瞬間だった。オレの童心がひょっこり顔を出してきた。

この加速感、サイコー!! 全身に伝わる風。あっという間に流れていく景色。

 

 

 

 

あまりの楽しさに自然と顔がにやけていたのが自分でもわかった。

これだ。きっとこれがこの旅で求めているものだ。日常では体験することのない

興奮。

ふとバイクのメーターに目をやると、さっきまで時速60キロで走っていたはずが一気に時速100キロまで上がっていたのだった。わーお!!!

 

 

 

 

この調子でマルセロたちを追い越してやろうと調子に乗る童心が、町中に入ると急に引っ込んでしまった。

視線をゆうやから外して、さらに前にいるマルセロとリッキーの方に向けると大渋滞しているのが見えた。

次の試練はすり抜けである。バイクの加速には慣れたが低速走行での平衡感覚がまだつかめていないオレにとっては一大事だ。

 

 

 

オレは『なんくるないさー(どうにかなるさー)精神』で、みんなを追っかけて車の間へ突っ込んでいった。

一台ずつ慎重にバイクを倒さないように、少しずつすり抜けていく。

集中力を最大限のレベルにしてどうにかクリアしていったのだった。

 

 

 

街中を抜けてビーチの通りに入ると、車の数は減り通行人が増えた。

ここまで来ると安心だ。駐輪場にバイクを止めて、ぶっつけ本番の最初の『バイクチャレンジ』は無事に終了して、一世一代の大仕事を終えたかのような

達成感がこみ上げた。

 

 

 

あまりの嬉しさに、至って冷静な他のメンバーとは対象的に一人だけ興奮して

「マルセロ、めっちゃバイク楽しい!! ありがとう」

「だろう! 次はもっとかっ飛ばすからな」

「いや、まだ慣れてないからそれはやめてーーー!!笑」

 

 

 

 

オレは興奮したままみんなと一緒にビーチに歩を進めていったのだった。