第58話 レンタル彼氏

第58話 レンタル彼氏

 

 

僕たちは再びサヌールに戻ってきた。サヌールに来たのは何度目になるだろうか。バリ島にいるはずなのに、なんだかホームタウンに帰ってきた気分だ。と言っても、実際はまだ3度目なのだが。

前回も泊まったインディホテルにチェックイン。ブラジル人2人と日本人2人の男4人とマルセロの妹ビアンカだけだった旅が始まった頃と違って、タイサが合流してアレックスとビビのカップルが合流してからは、格安のドミトリーより少し値が張るホテルに泊まるようになったのは仕方のないところ。

 

 

やはり、カップルは個室に泊まりたいのは理解できる。しかし、ホテルに泊まっているのに、僕は部屋を男3人でシェアして床に敷いたクッションで寝ている。不満がないといえば嘘になるが、そこに不満はない。

強いて言うならば、学生のときの席替えのようなワクワク感が欲しい。そうだ、次に誰かと旅に出るのなら、くじ引きで部屋の割り振りをしよう、などと思いながら荷物を部屋に移動させた。

 

 

 

チェックインのあとは、前回と同じ、いろいろな種類のご飯やおかずを量り売りしてくれる食堂でみんなでランチだ。辛くないか店員に尋ねながら入れてもらうのだが、食べてみるとすぐに汗が吹き出て辛いことを知る。彼らにとっては辛くないのだろう。この食堂には辛くないものがないと思う。

 

 

 

ランチのあとマルセロは、来月から働き始めるサヌールにあるダイビングショップで打ち合わせということで、タイサと一緒に出かけていった。アレックスとビビもどこかへ行ってしまった。

残った僕とゆうやとリッキーにはなぜか、今後の運命を左右する大事なミッションが課されていた。

 

 

 

 

その任務とは、「明日からの移動用のレンタルスクーターを確保せよ」。特に他にやることがなかったのでちょうど良かった。

僕たち3人はさっそくサヌールの町へ出かけた。歩いていると「FOR RENT(レンタル用)」のボードがかかったスクーターを見かけるのだが、店員に料金をきいてみると通常の2、3倍するらしく、諦めて探し続けた。

 

 

 

しかし、次もその次も同じような料金。みんなオレたちからボッタクれると思ってるのか、と思っていたのだが、年末は繁忙期らしく観光客が増えるので料金も釣り上がるそうだ。

僕たちはそれでも諦めずに、もっと安いスクーターを求めて歩き続けた。

 

 

 

しばらく歩いていると、ある旅行会社の前でリッキーが立ち止まった。

リッキーによると、前回サヌールに滞在したときにここの店員と仲良くなったらしく、店員と仲よさげに話し始めた。

いつの間に。恐るべしリッキーのコミュ力だ。

 

 

 

僕とゆうやは会話に入れずリッキーの話が終わるのを待つことに。

ふとゆうやがあるものを発見する。

レンタルスクーターにかける「FOR RENT」のボードが無造作に店に置かれている。それを見たゆうやが僕にフッてくる。

「ゆうまさん、これ持ってて」

「あ、はい」

 

するとゆうやは、スマホを構えてパシャリ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕はレンタル彼氏ユウマ。支払い額に応じた特別なデートをあなたにお届け。

今すぐ予約を!

 

 

 

この写真をFacebookに投稿すると、またたく間に拡散され、ヨーロッパや南米やアフリカなど世界中から、ぜひ私のところに来てほしい、結婚しましょうなど、たくさんのメッセージが寄せられました・・・今この文を書いてて物凄く惨めな気持ちになったので、誇張表現をするのはここまでにしておきます。

僕のプライドのために言っておくと、一応は、たくさんのいいねや、いくつかのコメントはありました。残念ながら、真面目な問い合わせはありませんでしたけどね。もし問い合わせが多かったら、本気で職業にしようと思っていたのに残念です。(一応、まだ受け付けてますので、DMお待ちしておりますよ)

 

 

 

僕たちが遊んでいる間にリッキーは店員と話をつけて、スクーターを2台借りられたようで、改めてリッキーの凄さを思い知ったのである。

待つこと10分。他のスタッフがスクーターを2台持ってきてくれた。

辺りはすでに日が暮れようとしていたので、残り3台は明日当たってみることにして僕たちは宿に向かった。

 

 

 

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