第73話 ウルワツ探検隊
翌朝、僕が目を覚ました頃には、すでにマルセロとタイサはいなくなっていた。二人とも寝坊せずに無事に出発できたようだ。
残ったメンバー(僕、リッキー、ゆうや、アレックス、ビビ)全員で朝食を食べて、午前中で少し観光をしてからお昼前にサヌールへ出発する予定となった。
朝食のあとに僕たちは「シングル・フィン」へと向かった。
朝の「シングル・フィン」は夜の雰囲気とは違って、ゆったりとした落ち着いた感じだ。
朝食を食べているカップルをちらほら見かけたが、夜のクラブモードとは全く違う。ここでの朝食もよかったかもしれない。何も注文する気はないが、僕たちは店の奥にあるデッキへと進んでいった。
デッキに出ると、夜来たときに予想していたようにオーシャンビューが一望できた。その美しさといったら、僕の予想を遥かに上回っていた。
目の前に何も遮るものはなく、海だけが広がっていて、心を落ち着かせる波の音が静かに響いている。
頬に当たるそよ風が気持ちいい。
海を眺めていると、華麗に波を乗りこなすサーファーたちの姿を見つけた。ボードを巧みに操り、回転を加えたり大技を披露するものもいる。
彼らを見ているとまたサーフィンしたい気もするが、僕の乳首は現在負傷中で、今刺激を与えると命を落としかねないので自制することにした。
しばらくサーフィンショーを楽しんだあと、付近を探検した。
実はこのエリアは迷路のようになっていて、シングル・フィンだけでなくカフェやレストラン、雑貨店、サーフィンショップなど、いろいろな店舗があったのだった。
知る人ぞ知る場所なのか、ここは。
先へ進んでいくと、怪しげな階段を発見したリッキーが躊躇することなく先陣を切った。
僕たちは一応リッキーのあとへ続くのだが、急な階段のくせして手すりが塩ビ管でできていて強度不足のように思える。
少し揺すっただけでかなりぐらつく。リッキーがのしかかったらひとたまりもないだろう。
ひとたまりもないだろう。次はないぞ。他の人を危険に晒すでない。もたれるんじゃない。
その先は、薄暗い洞窟のようになっていたが、大きな岩と岩の間から勢いよく海水が流れ込んできた。海へ続いているようだ。
どうやらこの場所は、先程シングル・フィンのデッキから見た海への入り口みたいで、サーファーたちが数人、海へと飛び出していった。
それに続き、リッキーも海へ飛び込んだ。そのはしゃぎようといったら、ほんとに悪気はないのだが、まるで水浴びを楽しむアフリカのカバのようであった。
リッキーの無邪気な水浴びシーンが終わると、そろそろ宿へ戻ることとなった。
その途上で取った写真を載せておくとする。
日焼けマックスの僕。逆光がさらに黒さを強調している
こんな文字見つけたら、いかにもって感じで撮っちゃいますよね。
ブラジルのサッカーチーム、コリンチャンスのロゴがあるとも知らずに、アレックスの一声で写真に入ってしまったリッキー。(コリンチャンスのライバルチームであるサンパウロFCファンのリッキーにとって、ライバルチームのロゴと写真に写ったのは屈辱的である)
衝撃の事実を知るリッキー。
求めらていた完璧なリアクションを取るリッキー。(僕とゆうやは、あとからこのことを知らされたので、写真では一貫してノーリアクションである。やはり日本人は一貫性がある。)
このエリアも楽しんだことだし、さあ帰るぞというときに大雨が降り出した。
周りにいた人たちもみな一斉に屋根の下に隠れ雨宿りした。バリの天気は変わりやすく、いつ雨が振り始めてもおかしくない。こんなのはもう慣れっこである。
他の観光客たちと一緒に、雨が止むまでしばらく待つことになった。
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