第87話 ケビン合流

第87話 ケビン合流

 

 

2017年2日目の午後は、台湾系アメリカ人で消防士であるケビンがバリに到着することになっていた。

ケビンは、3か月前にエアビ(Airbnb)のゲストとして沖縄に来て、僕が観光案内しているうちに仲良くなった。

僕とマルセロのバリ行きが決まったとき彼を誘ってみたが、年明けに合流するとすぐに返事してきたノリの良さである。

 

 

海外旅行で現地で外国人の友達と合流するというのは、僕にとって初めての経験だったのでなんだかワクワクした。

 

 

ということで、その日、特にやることのなかった僕は、同じく暇人のリッキーを引き連れてケビンを出迎えに空港へ向かった。といっても、こちらはスクーターで行きケビンはキャリーバッグを持っているので、ケビンをスクーターの後ろに乗せることができない。

本当にただの出迎えのためだけに空港へ向かった。

 

 

空港でケビンを出迎えて、リッキーを紹介した。

それから僕は真剣な表情でケビンに言った。

 

「ごめん、タクシーでホステルに向かってくれ。僕はただ、空港で君を出迎えたかっただけなんだ」

 

彼は苦笑いしながらも承諾してくれて、すぐにタクシーを捕まえた。

 

 

宿に着いてケビンがチェックインを済ませると、僕たちはクタを散策した。

ビーチを歩いたり、お土産品店が回ったりと、特にハプニングなどなにも起こらない平和な午後となった。

 

 

夕方になると、リッキーがスカイガーデンのディナーバイキングに行きたいと言い出した。

スカイガーデンは、午後5時から午後9時までがディナーバイキングの時間となっている。

大晦日に不発に終わり、まだ僕にとって苦い記憶の残るスカイガーデンだが、約1000円で食べ飲み放題というのは魅力的である。事前にネットで調べたが、メニューも豊富で評価が高い。

 

 

ここまでの滞在で、節約のためにバビグリン(豚の丸焼き)を除いて安いものを食べてきたので、そろそろご馳走を食べてもいいはずだ。ここ数日引きこもっていたゆうやもこれには賛成で行く気満々だ。

しかし、今日バリに着いたばかりのケビンは、地元料理が食べたいということでひとり別行動となった。

 

 

グループで旅行するときは、必ずしも全員の意見がまとまるわけではないので、別行動するのもありだと僕は思う。でないと、旅行が長期間になると徐々に不満が溜まっていって喧嘩の元となる。

そんなことがあるので、僕は本来、予定を立てずに自由気ままなひとりでのぶらり旅が好きだということを付け加えておく。

 

 

この場合での、ケビンの別行動をとがめない僕たちの態度は大正解だと思う。

僕たちは、ケビンひとりと、その他3人に分かれてディナーへと出かけた。

 

 

午後5時からのディナーというのは少し早いが、貪欲な僕たちは少しでも元を取るために5時にスカイガーデンを訪れた。

クラブの時間とは違い大晦日のときよりも人は少なく、意外とすんなり中へ入れた。

 

 

久しぶりに食べるご馳走に僕は胸を踊らせた。

皿を取って列に並びながら、どの料理を取ろうか迷う。牛肉、豚肉、鶏肉、ソーセージ、ベーコン、ラザニア、グラタン、パスタ、あれもこれも皿に盛っていると、いつの間にか山盛りになっていてこれ以上はスペースがなくなっていた。

 

仕方なく席についてゆうやとともにリッキーを待つ。

すぐにリッキーが来ると、僕とゆうやは目を丸くした。これでもかと盛った僕の皿の2倍はある高さにまで、あれもこれもと皿いっぱいに盛られている。

その皿が僕よりも早く空になってしまうのだから、さらに驚きだ。まさにブラックホール並みの胃袋と言えるだろう。

 

 

かなりハイペースで食べたため、僕たちは4時間あるディナーバイキングの時間のうち、1時間にも満たないうちに満腹になってしまった。

残りの時間は、元を取るために無理やりカクテルを飲みまくった。

 

 

帰る頃には、僕は食べ過ぎで吐きそうになっていた。行く前は死ぬほどご馳走を欲していたのに、帰る頃にはもう二度と来たくない、食べたくない、という状況になってしまった。これではまるで、日本で焼肉屋に行ったときと同じではないか。

1000円を払って罰ゲームを体験した感じになってしまった。

 

 

やはり、何事もほどほどにするのがちょうどいいのだろう。欲張りすぎても一定のレベルを超すと満足度は変わらない、むしろ下がっていくこともある、という教訓になった夜となった。

 

 

僕がバリで毎日遊んでいるかのような話ばかりだが、実のところは、バリには、人生で大切なことを学びに来てるのだ。ウソである。

本当は、求めてもいないハプニングが起こり続け、結果的に学びに繋がっているというところだろう。

 

 

 

 

 

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