第88話 ダークエンジェル合流
台湾系アメリカ人のケビンが合流した翌日、つまり2017年1月3日のことである。
この日は、僕たちと別れて別行動を取っていたアレックスとビビとサヌールで合流してウブドに行くことになった。しかし、ゆうやは帰国までの残りの日数をサヌールで1人でゆっくり過ごしたいということで、サヌールでお留守番だ。
確かにクタはパーティーピーポーにはぴったりの場所だが、1人でリラックスしたい人にとっては賑やかで騒がしすぎる。その点でサヌールはベストとと言わずともベターな場所だ。
曲がガンガンにかかったナイトクラブとジャズが流れているおしゃれなバーといえば、読者にも違いわかるだろう。
僕たちが順番よくチェックアウトしているときだった。
ケビンがロビーでパソコンを使っているひとりの女の子に声をかけていた。
ケビンのような外向的な性格で誰にでもすぐに話しかけられるというのは、正直言うと、僕にとってかなり魅力的である。
もし僕が知らない女の子に声をかけるとなれば、松岡修造有り余ったエネルギーで「できる、できる、できる、君ならできる」と声をかけられてようやく行動に移せるかどうかといったレベルである。(松岡修造に怒鳴られるのが嫌だから行動しているのかもしれないが)
驚いたことに、ケビンの、僕たちこれからウブドに行くけど一緒にどうだい、という誘いに対して女の子は、あら、ぜひ同行させてもらいますわ、というのだ。
ケビンは初っ端からサービスエースを1本取ったのだった。しかもその女の子、よほどのイケメンじゃない限り直視するのを許されないような格好をしている。僕みたいなごく普通のあまり冴えない男が見たら、いったいどんな言葉で罵られるか考えただけでも恐ろしい。
彼女は下はデニムのショートパンツでごく普通なのだが、トップは黒いキャミソールというのか、細い肩紐が胸の当たりまで伸びている服を着ている。
問題は胸元で、乳房が半分くらい露出しており、その上、全体がメッシュ生地になっている。ブラジャーの肩紐が見えないのでノーブラなのだろう。きっと服がズレたら乳首が見えてしまうだろう。ほどよい角度で乳首がかくれんぼしている。なかなかの達人だ。時々、いないいないばあの要領で顔を、いや、頭を出してくれると、ーーー乳頭だけにーーーこちらとしては嬉しい。
彼女はアジア系の顔で普通のレベルなのだが、乳房チラ見せ、むしろ半分以上見えているというほとんどの男には効果絶大のエロ路線で高スコアを叩き出していた。
なにはともあれ、ドバイからお越しのディーバ様が僕たちの旅に参加することになりました。
ちなみに、ティーバというのは「女王様気質の嫌な女」という意味があるらしい。僕たちは、このことをあとから痛いほど思い知らされることになるが、今はこのまま話を進めていこうと思う。
まずはサヌールに移動するのだが、3台のスクーターしかないのでリッキーの後ろにディーバを乗せ、ゆうやのスクーターに僕が座り、ケビンが練習がてらひとりで乗ることになった。
ここで問題となるのが、3つしかヘルメットがないことだ。
クタではよく警察官を見かけたので止められる可能性がサヌールより高い。僕たちがどうしたものかと話しているところで通りかけのおっさんが口を挟んできた。
「おいヘルメットなら1日1000円で貸してやるぞ」
「ちょうどいい。ありがとう」とケビンが即座に反応した。
僕とリッキーがすぐに止めに入り、おっさんを追い払ってケビンに説明した。
バリに着いたばかりのケビンはバリの物価を知らないので、1日1000円がどれほど高いかわかっていない。ケビンには完全にぼったくりだということを伝えた。
しかし、道端で他人の話を聞きつけてビジネスに結びつけるバリ人の貪欲さは見習うべきところがあるのかも知れない。
ここで意見を出してきたのがディーバだ。彼女が話している間も、僕は視線がおっぱいに下がらないように必死だ。女性は男がおっぱいをちら見しているのに感づいているというではないか。
彼女のおっぱ・・・違う、目を見るんだ、小さい頃に大人たちに人の話を聞く時は、ちゃんと目を見なさい、と習ったのを僕は必死に実践した。
「そんなの、周りにかかってるヘルメットを盗んだらいいじゃない」なんと、彼女はそう言い放ったのだ。
男性陣4人は冗談だと思って笑っていたのだが、どうやら本気らしい。周りに停められているスクーターにぶら下がったヘルメットを本気で盗りかねないので、リッキーが彼女を制した。
結局、3個しかないヘルメットはドライバーたちがつけることになった。ノーヘルの人も、3ケツ以上のバイクも周りにたくさんいるのだから大丈夫だろう。僕らは警察に見つかるまいとサヌールへ出発した。
僕がスマホを持ってグーグルマップで道順を伝えゆうやが先導役となり、警察に見つからないように注意しながら渋滞を突き進んだ。
結論からいうと、僕たちの考えは浅はかだった。
僕とゆうやがある交差点を通り過ぎると、後ろに続くはずのリッキー号とケビン号がいなくなっていた。
路肩にスクーターを停めて、後ろを振り返ると小さな交番らしきところにリッキーとケビンがいた。どうやら捕まったようだ。
僕とゆうやも見つかったら捕まる可能性があるので、木の陰にかくれて様子を見守った。
数十分すると、彼らは解放された。ノーヘル、無免許運転で罰金を払わされたらしい。
かわいそうに。きっと日頃の行いが良くないからそんな目にあったのだろう。僕みたいに真っ当に生きると良いことがあるぞ、と僕の教えを説いてやろうかと思ったが、あいにく僕には「良いこと」の例が全く無いので今回はよしておいた。
今後、僕の教えを説くためにも「良いこと」を体験すること、としっかり脳裏に刻んだ。
その後は警察に見つかることなく、僕たちは無事にサヌールにたどり着いた。
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