クレイジーハロウィン第1話 ベジータ、韓国でハロウィンに参加するの巻
- 2018.09.28
- 短編集
それは2年前の10月末の韓国でのできごとだった。 その前月の9月にウチの民泊に泊まりに来てくれた、韓国のソウル
で英語の先生をしているエイミーとアリサを尋ねて、ハロウィンのある週末を狙って沖縄の那覇空港から韓国のソウルへと飛んだ。人生初のハロウィンのイベントを、まさかソウルで体験するとは夢にも思わなかった。
機内で、コミュニケーション能力を鍛えるために韓国語のハンドブックを手に取って、となりの席に座っているカップルに韓国語で話しかけてみた。
「アンニョンハセヨ〜。ちょっとお聞きしたいのですが・・・」
それからが続かない・・・。韓国語でのコミュニケーションをすぐにギブアップして英語に切り替えるのだった。
ソウルに着くまでの間にカップルと仲良くなって連絡先を交換して、次に沖縄に来るときにはウチのエアビに泊まってくれる約束をしてくれた。それからカップルとは別れた。
入国審査のあと荷物を取って、今回試してみたいことのうちのひとつ、『フリーハグ』の正装に着替えるためにトイレに入った。ただハロウィンに参加するだけではつまらない。何か面白いことをやってみたいという衝動に駆られていた。
今回のハロウィン用のコスチューム、ドラゴンボールのベジータの戦闘服に着替えて、フリーハグに挑戦だ。テーマは、「ベジータ様がフリーハグをしてやるぞ」。空港でふざけた格好をしているのは間違いなくオレだけだろう。ハロウィンで仮装するにはまだ一日早いようで、仮装している人を誰一人として見かけない。
トイレから出た瞬間に一気に恥ずかしくなってきた。しかし、今オレを見ている人たちとは二度と会わないからどうでもいいと思うと、少し気持ちが楽になった。
気がつけば、周りの人の注目を一斉に浴びている。びっくりした顔や笑っている顔、そして引いている顔、さまざまな表情が見えた。電車の駅に行くために先へと進んだ。
駅へ向かう途中、空港の男性職員3人組とすれ違った。すると3人が声を揃えて「ベジータだ!」と嬉しそうに叫んだ。
その声に反応して振り向いて笑顔でお辞儀しておいた。なんと謙虚なベジータなんだろうか。ドラゴンボールの世界観を一瞬壊してしまった。
電車に乗って席に座っていると、向かいに座っている5歳くらいの男の子が、オレのことを見ながらお母さんに耳打ちしている。とりあえずその男の子を見つめて変顔で笑わそうとするも笑ってくれない。お母さんがずっと警戒しながらオレのことをじっと見ている。男の子を笑わすのを諦めて、オレは変顔から真顔に戻した。
ようやくホンデ駅につくと、まるで東京の駅のようにどこを見渡しても人ばかり。沖縄出身の電車になれていないオレにとっては避けたい状況だ。
他の人の邪魔にならないように、周りの人の競歩のような歩くスピードに合わせて改札口へ歩きだした。
改札口へ向かって歩いていると学生らしき男が話しかけてきた。
「ベジータ! 一緒に写真撮ってもいい?」
「おう、いいよ」
立ち止まるスペースなど無いので、歩くスピードを落とさずにふたりでセルフィーを撮った。
そんなことがホンデ駅で4、5回起きて、ちょっとした有名人気分を味わえた。
改札口を抜けて外に出ると、さすが若者の街ホンデというだけあって若者で溢れかえっている。
オレは駅のすぐそばの人通りが多い道のそばに腰をおろした。まずは、ボードに「ベジータとフリーハグ」と書いてそれを持ってその場に立ってドッシリと構えた。
通り行く人達のほとんどが、一瞬目を合わせてすぐに逸らして通り過ぎるとうパターン。
10分後、ひとりの男が近づいてきた。すぐにハグしてやろうとすると、軽く拒否られた。
「ここじゃなくて、別の場所に移動したほうが成功すると思うよ」
「そうなの。ありがとう」
男の言うとおりに、今度は人がたくさん集まって、喋ったり待ち合わせをしている場所に移動した。
女の子のグループがオレのことをジロジロ見ている。来るか来るか・・・来ない。
ここではベジータは人気がないのか。ベジータとフリーハグの組み合わせが悪いのか誰も食いついてくれない。
傷心のまま時間切れとなった。近くの公衆トイレで服を着替えて、宿すら予約してなかったのでエイミーとの食事の前に宿探しの旅へと出発した。
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