第56話 食べ物の恨み
今日はチェックアウトの日。アメドから再びサヌールに戻る。
それぞれが荷物をまとめると、一緒に朝食を食べて宿泊代、バビグリン(豚の丸焼き)を含めた食事代の支払いをする。
スタッフが合計金額を僕たちに伝えたところで、ブラジル人男性陣がキレた。
「なんじゃこりゃー!!! 高すぎるわ!!」
どうやら食事代が予想を上回る金額らしい。思い返すと、全員がものすごい勢いでビールを飲んでいたし、バビグリンもそれなりに値が張る。僕の記憶が正しければ、まあ妥当な金額だと思う。みんなだいぶ酔っ払っていたから、記憶が曖昧なんじゃないかな。
彼らは納得がいかないようでスタッフに抗議している。
これではらちがあかないと、スタッフはオーナーのおばちゃんを呼んだ。
おばちゃんが来ると、より激しい口論となっていった。
女性陣は男性陣をなだめようとしている。僕とゆうやの日本人ふたりは、厄介なことには首を突っ込みたくないので少し離れて「ブラジル 対 バリ」の戦況を見守る。
僕たちが飲んだビールの正確な数と金額をおばちゃんが提示しても、すでに後には引けない状況になっていて論点が切り替わった。
よくもオレたちのバビグリンを勝手に食べたな。
え、そこかい。
口論に首は突っ込まななけど、さすがにこれはツッコむわ(心の中で)。
どうやらブラジル代表の選手たちは、バリの選手たち(スタッフたち)が勝手に自分たちの分のバビグリンを切り分けて食べていたのが気に入らないらしい。
ブラジル代表選手たちの主張は、スタッフもバビグリンを食べたのだから、彼らもお金を払うべきだ、その分割引しろ、ということだ。
確かにバビグリンはめっちゃおいしかったもんな。あれをお金を払わずに勝手に食べられたら腹立つよな。
もう少したくさん食べたかったのに、やつらのせいで食べられなかった。
要するに、食べ物の恨みですな。
それに対するおばちゃんの言い分は、スタッフたちもバビグリンを食べたのはこの地域のしきたりだから、だそうだ。
おばちゃんもその時にしっかりと説明したら良かったし、僕たちもその時に、なぜスタッフも勝手に食べているのかを聞けば良かったじゃないか。どっちもどっちだ。
それに、レントッド(仲良くなった宿のスタッフ)と話して、彼らの月給が日本円だと2、3万円しかないことを知っている僕は、そのままの値段を払ってあげたい気持ちでした。まあ、口論が面倒くさいのが主な理由ですけどね。
それでも水掛け論になってらちがあかないので、宿の最高責任者であるおばちゃんの旦那さんが登場した。
おっちゃんの登場で何か進展があるのかと思いきや、結局何も変わらず、試合終了のホイッスルが鳴った。僕たちはそのままの金額を払いました。
僕たちの去り際の「この宿に悪いレビュー書いてやるからな。レビュー、レビュー、レビュー、レビュー」という負け惜しみでしかない発言が、虚しく響くのであった。
僕がここで学んだ教訓はまさしく、食べ物の恨みは怖いということである。
バリで旅行の際は、バビグリンを買っても食べ物の恨みは買わないように注意しましょう。
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