第78話 バリに生まれるべきだった!?
15分ほどスクーターを走らせると、僕たちはチアゴファミリーが宿泊しているホテルにたどり着いた。
「ホテルについたよ。さあ飲もうじゃないか」
僕はホテルの前からチアゴにメッセージを送った。
5分経過・・・応答なし。10分経過・・・応答なし。30分経過・・・よし、帰るか。
結局、チアゴから返信がなかったので、僕たちは宿に帰ることにした。
明日の大晦日はすごいことになる。何がすごいことになるかはわからないが、それに備えて寝るべきだ、との経験豊富な僕の頭脳から下された判断によって、今夜はおとなしく寝ることにした。単に歩きすぎて疲れただけであることはトップシークレットとする。
翌朝、目が覚めるとチアゴからメッセージが入っていた。
「ごめん、昨日はホテルに戻ったら、あまりに疲れていたのですぐに寝てしまった。また次飲もう」
こら、これでいいのかマリーン(チアゴは沖縄の米軍、マリーンに所属している)。24時間寝ないでトレーニングとか、100キロマラソンとか、腕立て1000回、ひとりでもできないやつがいると殴られるとか、そんな過酷なトレーニングをしているのではないのか。
たかが睡魔ごときに負けてて良いのか、これでお国が守れるのか、とも思ったがもう終わった話をほじくり返してもしょうがない。次だ次。
2016年最後の日の午前は、2016年で一番ダラけた午前となった。要するにぼーっとしていたわけである。
午後からようやくエンジンがかかり、僕たちはインディホテルをチェックアウトしてクタへ向かった。
クタは空港から車で20分のバリ島南部に位置しており、ビーチリゾートとしてビーチの周りには、飲食店やショッピングモール、ホテルなどが立ち並び観光客に大人気の場所である。
僕は基本的には人混みが嫌いなのだが、今日は大晦日なのでイベントに参加しやすい場所がいいということで、ゆうやとリッキーと一緒にクタに数日滞在する予定だ。
グーグルマップによると、サヌールからクタまでは30分以内でつくようだが、クタには一方通行という予想外の罠がたくさんしかけてあった。
マップで指示された曲がるべき角を少しでも通り過ぎると、もちろん一方通行で逆走はいけないのだが、誰も見てなければ逆走したことにはならない、さあ戻るぞ、などと思っても後ろにはすり抜けするバイクの渋滞ができているので断念した。
仕方なく、はるか先にある次の交差点で曲がって、またその先を曲がって、また曲がって、また曲がってという風に、一度はまり込んだらなかなか抜け出せないアリ地獄状態を何度かくり返した。
クタ、うっとうしいぞ。
どうにか予約していたホステルにつくと、ほかの何十台、何百台とあるように、僕たちもスクーターをホステルの前に路駐した。この路駐のせいですり抜けるバイクの渋滞ができているとわかったが、僕ごときがどうこうできるわけではないので、このことについては見なかったことにする。
次はホステルのチェックインだ。
キャプテンマルセロがいなくなってしまったいま、ゆうやとリッキーを導けるのは僕しかいない。いや、僕なんかでいいのだろうか、ピンチになったら一目散に逃げ出したいんだけど。まあいいだろう。
僕が代表して声をかけると、フロントのお姉さんは素敵な笑顔で僕を迎えた。あまりに素敵すぎて惚れてしまいそうであるから、僕はすぐに予約していることを告げてパスポートを見せた。
もうひとりチェックインの対応をしてくれた女性スタッフがいたのだが、対応というよりパスポートのコピーだけしたのだが、やけに僕のことを見ている気がする。しかも満面の笑みなのである。
なるほど、今まで気づかなかったが、僕の生まれるべき場所はこのバリだったのかもしれない。バリでこそ僕のイケメンぶりが発揮される。
でも早まるのはよしておこうと思う。勘違いだとしたらものすごく恥ずかしい。と思いつつも、フロントの二人にはクールな日本人を装っておいた。
全員がチェックインを終えてカードキーを受け取ると、男性スタッフが来て部屋まで案内することになった。
僕たちがフロントから去る際も、Mr.ユウマ、楽しんで、と女性スタッフが声をかけてくれた。その横で僕のパスポートをコピーした子、パス子はまたしても無言の笑顔なのであった。
男性スタッフに連れられて僕らは部屋へと向かった。
まず、シェアスペースに差し掛かると、大きなソファとテレビがあって5、6人が映画を観ていた。こんなに人がいるとむさ苦しいので、混ざりたくはない。
バリでは必ずといっていいほど、どの宿にもあるプールがある。このホステルにも例外なくプールがあり、そんなに大きくはないが屋根付きでいつでも入れるようだ。
プールを通り過ぎると、スタッフがここがトイレとシャワールームです、というので確認してみた。すべて同じデザインのドアで何も表記していないので、ドアを開けてみるまでトイレかシャワーかわからないというお楽しみがある。
本気でうんこを漏らしそうなときには、漏らす確率をぐんと上げることが予想されるので注意しなければならない。
やっとのことでドミトリーにたどり着いた。ここまで来るのに200メートルは歩いたであろう。それほど奥行きのあるホステルみたいだ。
ドミトリーなのでもちろん部屋の中にいくつもベッドがあっていろんなゲストが泊まるわけだが、どうやら今現在は僕たちだけしかいないようだ。
ここでスタッフが部屋の説明を済ませると、南京錠を見せてきた。ベッドの下にある収納引き出しは南京錠でロックできるようになっているが、肝心の南京錠がない。南京錠を売りつけるための布石であることは間違いない。商売に対しての貪欲さが伺える。
あとから他のゲストも来るかもしれないので、念には念を入れて仕方なく3ドルで南京錠を購入した。
さっそく荷物をしまって南京錠をかけるのだが、おもちゃかと思うほど小さい。本気出したら素手で破壊できそうな気がする。
バリではそういう小さいことを気にしていてはキリがないので、荷物をしまって待ちへ出かける準備をした。
大晦日のクタ、何かが起こる。
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