クレイジーハロウィン第7話 ベジータは人気者!?
バーに入った瞬間に、オレは何か違和感を感じた。それが何なのか突き止めるために、周りを注意深く見渡してやっとのことで気がついた。ここはゲイバーであった。バーのお姉さんたちはみな、オネエだったのである。ヒゲの濃いオネエもいたりと、よく観察するとすぐにわかるものであった。
まさか、韓国で人生初のゲイバーを体験するとは思いもしなかったのである。
唯一空いていた通りに面した席に座った。冷たい風が当たって肌寒いが、通りで賑わう人たちを見渡せる特等席でもある。
店内は客で溢れかえっていて、あとからカップルの2組が相席することとなった。そのうちの一組のカップルのコスチュームはなんと、イエス・キリストとシスターである。
シスターが聖書を読むふりをして、イエスがシスターの頭を撫でるという、2人のありえそうでありえない振る舞いにその場にいた全員がどっと笑いだした。
オレは通り側の席に座っていたので、通りを歩いている人がたまに「ベジータ、こっち向いて」と声をかけてきた。そんなときはベジータになりきった。
「戦闘力たったの5か・・・ゴミめ」
とポーズをとって決めて台詞を言い放つと、通りの人たちは喜んで写真を撮っていった。
しばらくすると、タンスの格好をしているジンの友人が通りかかり、彼の名を呼んだ。ジンとその友人はしばらく話すと、みんなを呼んだ。タンスのコスチュームに興味津々なエイミーが彼に何のコスチュームかを尋ねてみた。
男は自信満々に「ワンナイトスタンド(ワンナイトラブ)だよ。」よく見ると、タンスの上にはタバコやコンドームの袋、メモなどがあって実によく再現されている。エイミーは彼のコスチュームを大変気に入ったので、みんなで写真を撮ることとなった。
バーの向かいがクラブだったので、そのままの流れでみんなで向かいのクラブに入った。中には、当たり前のごとく、コスチュームを着た人でいっぱいである。オレたちは、人混みをかき分けながら奥の方へ進んだ。だが、流れている曲が誰の好みでもなく、10分も経たないうちに外へ出てしまった。
再び通りに出て、特にあてもなく人混みの中をひたすら突き進む。すると、スパイダーマンに遭遇したので、オレは少しテンションが上がって、一緒に写真を撮ってもらった。普通のツーショットではおもしろくないので、ポーズをとってもらうことにした。
オレがどんなにポーズを変えても、スパイダーマンは頑なに同じポーズをとり続けた。こだわりのポーズかもしれないので許してやろう。スパイダーマンにお礼を言って別れた。
みんなで通りを歩いていると、路上でお酒を売っている人たちがいて、着色したテキーラを点滴袋や注射器などに入れて販売していて注目を集めていた。ただの酒ではあるのだが、オレたちも気になって買うことにした。
さらに進んでいくと、人々は気に入ったコスチュームの人を見つけては写真を撮っていた。この夜、オレのベジータのコスチュームは人気を集めていた。よく通り行く人達に二度見されて「ベジータ、一緒に写真を撮ろう」と声をかけられたのだった。
日本ではお馴染みのセーラームーンを見つけると、オレは一緒に写真を撮ってもらったのだが、セーラームーンから離れた直後にあれは男だとジンに突っ込まれて落胆するのであった。
セーラームーンが男だったことに落胆しながら歩いていると、100メートルほど離れていたのだが、はっきりとオレの仲間の姿が目に写った。ドラゴンボールは世界中で有名なアニメなので、今夜必ずひとりくらいはいるであろうと読んでいて、まさしく予感は的中した。
相手もオレのことに気づいて、遠くから手を振ってきた。そして、ついにツーショットを撮るに至ったのである。
残念ながら悟空ではなく、クオリティの低いピッコロなのだが、ふたりともあまりの嬉しさにハグしたほどだ。この瞬間ふたりは注目の的となって、たくさんの人達に囲まれて写真を撮られた。
間違いなく今夜のベストモーメントのうちのひとつである。
ピッコロに別れを告げて次へと進んだ。
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