コミュニケーションの真骨頂

コミュニケーションの真骨頂

 

 

この究極のコミュニケーションの方法は、元々、内向的な私が何年も試行錯誤を繰り返して苦労して身につけたので、本当はあまり教えたくありません。

しかし、勉強熱心で好奇心旺盛なあなただけに、最後までこの投稿を読んでくれた場合、特別にお教えします。

 

 

 

先日、アメリカ人の友達に誘われて、米軍基地の中で開催されたアメリカ人だらけのサッカーのトーナメントに参加してきました。

その際に、私が、これまでに海外や沖縄で多くの外国人と接することで身につけた、世界で通用するコミュニケーション術の真骨頂を、無意識のうちに試合中に発揮してしまいました。

 

 

 

ほら、よく言うじゃないですか。
何百回、何千回と繰り返した練習は体に染み付いて、極限に集中した状態、いわゆる『ゾーン』に入ったときに体が勝手に動く。

特に何年も同じスポーツをやってきた人なら、一度は経験したことがあるかと思います。

 

 

 

それは試合中に起こりました。

相手の陣地後方から前方、私たち陣地の左端の空いているスペースへ、グラウンダーの中距離のスルーパスが送られてきました。

そのボールを、180センチ以上はある黒人の相手フォワードが、ものすごい形相と勢いでボールを追いかけてきます。

 

 

 

この日、ディフェンダーとしてプレーしていた164センチの私が、そんな選手にパワーとスピードでもちろん勝てるわけありません。

しかし私は、これまでに何年もかけて磨いてきた予測能力で先読みしていたので、相手選手よりもわずかに先にボールに追いつきそうでした。

 

甘いぞ。アメリカ人。これが経験の差ってやつだ。私がお前などに負けるはずがないのだーーーーーー

 

このままボールを見送れば、ラインを割ってこちらのスローインとなる。

 

 

 

ところが、私のすね毛のようにもっさりと生えている雑草のおかげで、ボールの勢いが少し落ちてボールが出るまでに少し時間がかかりそうだ。

やばい、ボールが出るまでの0.5秒、やつを足止めしなければ、ボールに触れられてしまう……。

 

 

そうだ!!

キックフェイントして、大きくボールをクリアするフリをして、相手の動きを止めよう。

はっはっは、いずれにせよ、私の計画に狂いはないのだ。残念だったな、アメリカ人の若造よ。

ボールがラインを割るまでのわずか0.5秒を稼ぐために、私は助走して腕を大きく振りかぶり、左足を上げてキックモーションに入った。

 

 

 

予想通り、やつはビビって腕で顔を覆った。

やつの戦意は奪った。あとはボールが出るのを待つだけだ。
そう思った私は、やつとの1対1での勝利を確信して、キックの体勢を解いた。

 

 

 

唯一の誤算だったのは、『雑魚め』という優越感に浸った感情が表情に現れてしまったことだろう。

私の表情は、志村けんの『だっふんだ』の顔になっていたことは、ボールが出たあと、周りの反応で気づいた。

ボールを拾いに行こうとした瞬間、2メートル横で一部始終を観ていた副審が、突然「STOP IT(やめろ)」と言ってきた。

 

 

え、オレ何かした、と思いながら副審の方を観ると……

HAHAHAHAHAHAHAH

と腹を抱えて大爆笑している。彼は地面に膝から崩れ落ちると、大爆笑しながら地面を叩いた。

ん、他にも何人もの『HAHAHAHAHAHAH』が聞こえる。

 

 

周りを見渡すと、さきほど、ものすごい形相でボールを追いかけてきたフォワードの選手もHAHAHAHAHAH。

目の前にある相手ベンチの人たち全員もHAHAHAHAHAHA。

私のカバーリングに入ろうとボール側に走ってきていたチームメイトたちもHAHAHAHAHAHA。

しまいには、味方ベンチの人たちもHAHAHAHAHA。

 

 

この状況はいったい何なんだ。私がやったのか。私の顔が、私の顔が、空間を、すべてを支配したのか。

結局、その場にいたほぼ全員が笑いすぎによってプレー続行不可能な状態となり、試合は3分間中断した。

 

 

 

最終的に試合には負けてしまったが、私は空間を支配した。
そんな経験ができる人なんて、世界中に一握りの人しかいないはずだ。私はその一握りに入ったんだと確信した。

 

 

 

私が身につけた言葉を必要としない、空間を支配するほどの最強のコミュニケーション術。
ここまで読んだあなたは、それが何なのか、そろそろ気づいただろう。

そう、『変顔』のことである。『変顔』は世界中どこに行っても通用する『笑い』の基に成り立っている。

その『変顔』を極限まで磨いた私がゾーンに入ることで、足ではなく、顔で力を発揮してしまった。

 

 

 

英語やポルトガル語を全く喋れなかった海外に渡った当初の私は、言葉よりも『変顔』で人を笑わせる技術を必死に磨いた。
洗練された『変顔』は、いつの間にかゾーンに入った無意識の状態で発動されるようになった。

 

もはや、私はワールドクラスだと自負したい。

 

 

 

あなたがもし、コミュニケーションは、いかにうまく相手に自分の思いや考えを伝えるか、いかにうまく相手の話を聴けるかだけだと思っていたら、大間違いである。
そんなものは、コミュニケーションの一要素に過ぎない。

 

 

コミュニケーションには、ノンバーバルコミュニケーション(非言語コミュニケーション)というものもあって、表情、ジェスチャー、声のトーンなど言語以外のことを指す。
そのうちの『表情』が今回の話の笑点(焦点)だったわけだ。

 

 

 

あなたもコミュニケーション能力を磨きたいのなら、毎朝、鏡の前でいろいろ『変顔』を作る練習をして、普段の人とのコミュニケーションに活かしてみてはどうでしょうか。

『変顔』によって空間のすべてを支配できる瞬間が、あなたにも訪れるかもしれませんよ。

 

殴りたくなる顔を作ってしまって、あなたがぶん殴られることがあっても知らんけどな。

 

 

 

 

 

 

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