第9話 サッカーは世界をつなぐ
次の日の夜、ついにバリでやりたいことのうちのひとつを達成するためにゆうやと共に行動を開始した。
それは、現地の人とサッカーをすること。まあこの場合フットサルでもいいけども。
イギリス人のジョーを誘おうとしたが、この時彼女はあいにく外出していた。
まずはグーグルマップで近辺にフットサル場がないか調べてみると、バイクで30分ほどの距離に2件のフットサル場を発見した。
さっそくフットサルの服に着替えてフットサル場に向けて出発した。
今回は、日本でバイクの運転免許も持っているゆうやに運転を任せてオレはおとなしくグーグルマップを使ってガイド役に徹した。
前日手に入れた秘密兵器のSIMカードがさっそく役に立つときが来たのだった。
1件目のフットサル場にたどり着くと、そこには3コートあって、思った通りたくさんの人がプレーしていた。
すかさず目の前を歩いてきた若造に聞いてみた。
「オレたちもプレーしていい?」
「うーん・・・今夜は公式のリーグで登録している選手じゃないと出れないんだよ」
「そうなんだ・・・。ありがとう」
このフットサル場では今夜はプレーできなさそうだ。すぐに気持ちを切り替えて、ここからそう遠くはない2件目のフットサル場に向かった。
2件目のフットサル場に着いてみると、ここでも1件目よりは人数は少なかったが試合が行われている。
ここのプレーヤーたちは1件目と比べて少し年齢層が上の人たちだったが、そんなことは関係ない。せっかくここまでたどり着いたのだから、フットサルがしたい。
ベンチで座っている貫禄のある、この場を仕切っていそうなふくよかな男性に声をかけてみた。
「すみません(安西先生)、フットサルがしたいんです。やらせてください。」
「いいよー。次のセットで二人とも入りなさい」
「本当ですか!!! ありがとうございます!!!」
オレとゆうやはフットサルシューズを履いて次のセットになるのを待った。
今やっているセットが終わって休憩時間に入ったあと、ようやくオレたちの出番がやってきた。
まずはゆうやとふたりで、プレッシャーをかけてくる敵をパス交換で簡単にいなしていく。それから、ときおり、オレたち二人がサッカースクールでコーチするときに教えるテクニックをどんどん繰り出して見せつける。
そんな調子に乗っていたところだった。突然、オレの息が以上に上がり始めて苦しくなった。
バリの蒸し暑い気候と、ここ数日間ろくに動いていなかった体が悲鳴を上げた。
ガーン!!!
まだやれる!!! ゼェゼェしながらも、どんどん動いてゆうやからパスをもらった。
そして、ゴール前でシュートを放ち、ゴーーーーーール!!!
ここぞとばかりにはしゃぐオレ。その様子をそばで控えめに見ているゆうや。
その姿は対象的であった。
そのあとも、既にバテている人たちを前に、ふたりで魅せるプレーをして20分のセットが終わった。ここで今夜のフットサルは終わってしまった。
たったの20分のプレーだったが、体がなまっていてだいぶ疲れてしまった。
それでも、バリ島でフットサルをするという目的は達成されたので、充実感に満たされていた。
フットサルが終わって、みんなから出身地を聞かれたり、プレーを褒められたりと話し合った。その中のひとりが、ちょうど1週間前に東京や大阪に観光に行っていたらしく、そのときのことを話してくれた。彼は嬉しそうに話していたが、沖縄出身のオレとゆうやはあまりそこらへんには詳しくないので、軽く流しておいた。笑
みんなで集合写真を取って、Facebookで連絡先を交換して、沖縄に来るときはオレとゆうやに連絡するように強く言っておいた。
話が終わると、みんないつの間にか着替えていて、だいたいの人たちが去っていってしまった。
シーンとしたフットサル場に取り残されたオレとゆうや、そしてまだ残っている数人の人たち。さっきまでの騒がしさとは打って変わり、静まり返っていてむなしい。
このフットサル場が、このあとすぐに閉まりそうな空気だったので急いで着替えた。
オレは着替えを持ってトイレへ行った。ほかに誰かが入ってくる前に、服を全て脱いで、パンツとズボンを先に履いた。そのとき、遅れてゆうやも着替えに、
トイレにやってきた。と思ったが、もう片方のトイレへ入っていった。
ん???
「ゆうま、ウケる!!笑 女子トイレで着替えてるよ!笑」
「オーマイガー!!!笑 誰もいないからセーフでしょ!?」
「女の人が出てきてたら完全にアウトだったね!笑」
間違いない。
ちゃんと男のマークを確認したはずなのにと思い、もう一度両方のマークを確認してみると男女のマークがデザインは違うが、どちらとも黒色であった。
日本にいると、たいていが男性が青で女性が赤で分かれているのに慣れてしまっていて、勝手に女性は赤と解釈してしまっていた。『習慣』の怖さを思い知ったのだった。
と言い訳はここまでにしておこう。
サッカー(フットサル)は国、人種など関係なく、ボールひとつを通して色んな人とつながることができる。
オレが旅をする時に『現地の人たちとサッカーする』というスタイルがこの時に確立された。
サッカーに限らず、自分の趣味や好きなことで簡単に人と人が繋がれるという素晴らしい体験ができた思い出の夜になったのだった。
女子トイレで全裸になったのもいい思い出だ。笑
いつも出会う人に恵まれていて、今回一緒にプレーした人たちも快く受け入れてくれて幸運であった。
行動すれば何か起きるし、自分の趣味や好きなことを発信していれば、自然と仲間が集まっていく。そんなことを強く感じた夜でもあった。
つづく。
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