その情報いる?
先日の夜、僕がフットサルに参加しようと、那覇市内のとある小学校ーー仮にM小学校としましょうーーに向かっていたときのできごとです。
M小学校は住宅街にあり、道が細く入り組んでいて初めて来る人にとっては分かりづらい場所にあります。
僕は以前にもM小学校に行ったことがありましたが、その時から数ヶ月経ってしまって道を覚えていないので、グーグルマップにナビしてもらってました。
自宅から車を運転すること約40分、僕はグーグルマップのお姉さんに導かれ、ようやく目的地が近づいてきました。
そして、グーグルお姉さんは言いました。
「50m先を右折してください」
(はい、お姉さま。仰せのとおりにいたします)
僕は彼女の指示通りに右折して急な坂道を登りました。
そして、グーグルお姉さんは再び言いました。
「目的地に着きました。お疲れさまでした」
僕の前にはM小学校の裏門があり、アリ1匹通さねえぞ、と今にも聞こえてきそうな雰囲気で、非常に、完全に、閉まっていました。
そんな強固な門の前では、僕は赤子も同然、引き返す以外に為す術はありません。
前回来たときの記憶を辿ってみると、M小学校の駐車場の風景だけは思い出せました。
グーグルお姉さん、ここじゃないんだよ。
僕は気持ちを切り替えて、裏門にはたどり着けたから学校の外周に沿っていけば、グーグルなしでも正門にたどり着けるはず、と思い車をUターンさせました。
M小学校の外周に沿った道はなかったので、自分の土地勘を信じて周りをぐるっと回りました。3周も。
しかし、全然見つからないんです。
ここで僕は名案を思いつきました。僕のiPhoneにあるもうひとつのマップアプリ、アップル純正マップを使うことにしました。
「ヘイ、Siri(アップルの音声アシスタント機能)、那覇市立M小学校に案内して」
「M小学校へのルートを検索しています」とSiriさんは応え、3秒後には画面にルートが表示されました。優秀すぎる。
そして、学校周辺を3ラップも走破したことにより集合時間をすでに20分は過ぎていたので、僕はすぐにSiriさんの指示通りに無心で車を走らせました。
5分後・・・
僕は、非常に、完全に、閉まっている、アリ1匹通さねえぞ、と主張している裏門の前に、再び来ていました。デジャブ。
このあと、僕がSiriさんにどんな暴言を履いたかは、読者のみなさんは知らないほうが身のためだと思います。(ウソです。AIとはいえ、僕が女性をそんな風に扱うわけないじゃないですか。女性の接し方は、ワンピースのサンジを手本にしています)
ふと、ここで僕は思ったのですが、AI(人工知能)の限界はこの例に表れているんじゃないでしょうか。
どういうことかというと、
グーグルマップとアップル純正マップの機能がどんなに優れていても、所詮はAIなんです。
マップアプリの目的は、使用者を最短最速ルートで目的に導くこと。
効率よく結果を求めるために、そこに使用者への気遣いなどはないわけです。
それゆえに、車でのルートで探しているのに、駐車場までではなく建物のそばに到着しただけで案内を終了するのです。ひどいときには、目的地に着いてないのに、エリア内に来たというだけで案内終了となります。
細かく指摘すれば、車が通れるか微妙な、もしくは運転に慣れてない人には難しい狭い道をルートに含んだりすることもあるわけです。
使用者への気遣いの欠如です。
これが効率よく成果を求めた結果ではないでしょうか。今のAIの限界がここにあると、僕は思います。
人間の持つ共感力、発想力、創造力などの、他の動物にはない(もしくは勝っている)特殊能力は、いくら5年後、10年後に人間がやっているほとんどの仕事をこなすようになると言われているAIでも身につけられないでしょう(もしくは多大な時間を要する)
効率だけではダメなのです。
グーグルお姉さんとSiriさんの気遣いのなさに少しムキになって話がそれてしまいました。
僕はもうアプリには頼らないで、別の方法を取ろうと決心しました。
ここで役立つのが、昔ながらの直接の人とのコミュニケーションです。地元の人に聞けば良いのです。
僕は運良く近くを歩いている男性を発見して、声をかけてみました。
「こんばんは。すみません、M小学校の正門への行き方を教えていただけませんか?」
「M小学校かあ、説明難しいんだよね・・・」
と言いながらも男性はがんばって大まかな道順を教えてくれました。
うん、やっぱり人とのコミュニケーションがいい、と僕は思いましたね。
男性にお礼を告げて、言われた通りに車を走らせました。そして、その先でもまたまた迷うのです。
こうなってくれば、この状況で地元の人の土地勘以上に心強いものはありません。
僕はそこでも近くを歩いていた男性に声をかけました。
「すみません、M小学校への道をお尋ねしたいんですけど・・・」
4,50代の男性は困った顔で少し考えてから話し始めました。
「うーん、実は僕・・・」
(ん、なんだ、何か重要な話をするのか)僕は息を呑みました。
「小禄出身で(現在地から車で約30分の同じく那覇市内の地域)、あそこらへんに住んでいるんですけど(通りを指差しながら)、ここには去年の12月に引っ越してきたんですよ」
僕は思いました。
その情報いる?
僕は首里出身です、ってオレも自己開示したらいいんですかね。
「だけど、この先を進んだら着くと思いますよ」
「あ、わかりました。とりあえず行ってみます」
いや、ただのお前の推測かよ、と思いながらも僕は男性にお礼を告げて車を走らせました。
その後、30分遅刻の末、なんとかM小学校にたどり着けました。
しかし、いま振り返ってみると、
効率よく自分の目的を果たそうというAI的な思考は、僕の方でしたわ。
あのとき、僕は完全に「目的地へのルート」という情報だけを求めて、人間である男性の感情をないがしろにしていました。
男性があの状況で、個人情報をしゃべることによって強盗に襲われるリスクが発生するにも関わらず(赤の他人に教えるのですから多少なりリスクはあります)、僕に自己開示してきたのにはわけがあると思うんです。
彼は話し相手が欲しかったのでしょう。引っ越してきたばかりで話し相手がいなくて、ここ最近、寂しい想いをしていたのかもしれません。
だから僕は思うんです。連絡先を交換して、フットサル後に彼の家を訪ねて一緒にご飯でも食べながら話を聞いてあげればよかったんです。
これで彼の心が安らぎが得られるのなら、その方が良かったのです。
サイボーグゆうま、ニンゲンノココロ、ベンキョウ チュウデス。
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