第5話 大冒険の始まり。そして、クマさん現る!?

第5話 大冒険の始まり。そして、クマさん現る!?

 

 

香港からマレーシアのクアラルンプールに行って飛行機を乗り継いで、すでに日は沈んで夜になっていたが、ついに冒険の地バリ島に到着した。

飛行機でしっかりと仮眠を取って、冒険の準備は整った。

 

 

 

 

空港の到着ロビーに出ると、客を捕まえようと待ち伏せしているタクシーのおっちゃんたちがたくさんいて、オレたち3人を出迎えてくれた。

歓迎ムードは一瞬にして終わり、おっちゃんたちは瞬く間に仕事モードに切り替わって

「君たち、どこまで行くの?」

と、ピラニアのように獲物のオレたち3人に群がってきた。

「サヌールだよ。いくらで行ける?」

こんなことには慣れているマルセロ師匠が、まずはドライバーたちを競わせて一番安い料金を提示した人に絞って料金の交渉を開始した。

 

 

 

マルセロはさらに値下げ交渉を始めたがドライバーは却下した。

マルセロはとっさに、

「じゃあ他のドライバーに聞いてくる。たくさんいるから、一人くらいは受け入れる

と思うし」

「わかった。わかった。もう少し安くするよ」

少しでも儲けの欲しいドライバーの心理をたくみに利用したマルセロの交渉は成功した。

 

 

 

 

「見ろ。簡単だろ? こうやって安くタクシーを捕まえるんだぜ」

マルセロがドヤ顔で言ってきた。

師匠、さすがです!

 

 

 

到着ロビーから外に出た瞬間に、モワッという強烈な生暖かい湿気が肌にぶつかった。

 

暑い!!

 

沖縄の蒸し暑さにはなれているはずなのに、それ以上に蒸し暑く感じる。

汗をかきやすい体質のオレにとっては苦痛でしかないが、数日の間に慣れるまで我慢することにした。

 

 

 

値下げ交渉に成功したタクシーに乗って、空港から宿泊予定地のサヌールに向けて出発した。

空港を出るとすぐに大渋滞にはまった。ズラッと並ぶ車の長蛇の列の間からはおびただしい数のバイクが、どんどんすり抜けていく。

これからレンタルバイクを借りて運転する自分も、この大渋滞をすり抜けるんだろうなと思うと緊張してきた。

 

 

 

本来なら、サヌールまでそんなに時間のかからないのだが、渋滞のおかげで1時間かけてようやくサヌールに到着した。

オレにとって初めての東南アジアだから、ホステルに着くまでに薄暗い道をいくつも通り過ぎた時には、このあたりの治安は大丈夫なのかと

少し不安になっていた。

 

 

 

しかし、ホステルに着いて、その豪華さを見るとそんな不安なんか忘れてしまった。

敷地内に入るとすぐに、優しい光に包まれて落ち着いた雰囲気を醸し出している

プールが目に飛び込んできた。

オレもゆうやも目が点になり、開いた口が塞がらない。

 

 

いったいオレたちは宿代をいくら払うことになるのだろう。

宿代が先払いだったので支払いを済ませると、またまた開いた口が塞がらない。

1泊あたり日本円で1000円ほど。やすーい!!!

まだ寝床は見てないけど、あまりのコスパにおったまげた。

 

 

 

支払いを済ませたあとに寝床へ案内された。階段を上がって二階に上がると、そこにはソファやテーブルが設置されていて共有スペースになっていた。

共有スペースを抜けてドミトリーへ案内された。

 

 

 

 

ドミトリーの扉を開けると香港のホステルとは違って東南アジアを連想させるような木造の作りになっていて、それぞれのプライベートスペースにはマットレスがあって、すぐそばに荷物を置く棚が設置されていた。寝るときや着替えるときはすだれをおろして隠せるようになっている。

 

 

 

それぞれのスペースに荷物を置いて、とりあえず一階にあるバーで乾杯することになった。

地元のビンタンビールで乾杯をしてゆったりと過ごしている時に、やつは現れた。

「おい、マルセーロ! 久しぶりだな!!」

声の主の方を見ると、かなりテンション高めで、縦にも横にも大きいクマさんのような大男がオレたち3人の前に立っている。

 

 

 

彼の名前はリッキー。マルセロが10年前にロンドンに住んでいた時によくつるんでいた大親友らしい。彼もマルセロと同じくサンパウロ出身のブラジル人で、今回の旅のメンバーである。典型的な陽気なブラジル人という印象。

リッキーは空港でオレたち3人を迎えようと、タクシーで空港に行っていた。

マルセロと連絡がつかず、入れ違いになってしまった。タクシーの往復運賃も結構高かった。

 

 

 

 

リッキーは少し怒りながら、とんだ無駄足に終わってタクシー代を無駄にしてしまったことをマルセロに抗議した。

マルセロはいたって冷静で

「まあ、10年ぶりに会えたからいいじゃないか。小さいことをあんまり気にするな」

「それもそうだな。10年ぶりだな。元気だったか?」

リッキーがうまく丸め込められる様子を隣で見ていたオレは、笑いを堪えるので精一杯だった。

 

 

 

マルセロとリッキーの話が済んで、マルセロはオレとゆうやをリッキーに紹介した。

「よろしくな!!」

ほんとにテンション高すぎる。

 

 

 

何はともあれ、クマさん・・・いや、リッキーが旅の仲間に加わったのであった。