第31話 バトゥ洞窟への道のり

第31話 バトゥ洞窟への道のり

 

 

巨大大仏の方に行くと、そこには洞窟の入口まで延々と続く階段がある。階段を上りきらないと洞窟まではたどり着けない。

これからこの階段を上るかと思うとすぐに帰りたくなった。と、その前にとりあえず大仏と一緒に記念写真を撮って観光気分を味わう。

 

 

それから覚悟を決めて、ゆうやと一緒に階段を上り始めた。今朝目覚めたときは、前日の疲れが取れて完全回復したように思えたが、やはり長距離を歩いた疲れが脚に残っていて、階段の一歩一歩がとても重く感じられる。

洞窟を見終わって階段から降りてくる人たちのほとんどがしんどそうな顔をしている。

 

 

 

歯を食いしばりながら階段を上って半分の地点までいくと、階段のあちこちに猿がうろついている。目の前を歩いていたおじさんは、飲んでいたペットボトルを奪われてしまった。こやつらには近寄らないほうが良さそうだ。猿の動きに注意しながらも目を合わせないように階段を上り続けた。

 

 

 

あまりのきつさに無言になり、途中からゆうやとは一言もしゃべらなくなった。無我夢中で上り続けてようやく頂上についた。

目の前には大きな大きな洞窟が口を開けて待っていた。ふと後ろを振り向くと、巨大大仏の後ろ姿と広大な景色が広がっていて、先程までの疲れが少し和らいだ。

 

 

それから、いよいよヒンドゥー教の聖地と呼ばれるバトゥ洞窟に足を踏み入れた。

洞窟の中には、いろいろな像が飾られていたり礼拝所があってお祈りしている人もいる。

 

 

 

 

洞窟の奥の方へ進むと、今までの薄暗さとは打って変わって、突き抜けた天井から太陽の光が差し込んでいて、そのあたり一体がとても神聖な雰囲気を醸し出している。

オレは中心へ立って深呼吸して周りを見渡してよく観察した。これが自然の力でできた洞窟なんだと感動して自然の偉大さを感じた。

 

 

洞窟はここで行き止まり。オレとゆうやは引き返した。

やっとの思い出上った階段を今度は下らないといけない。猿の親子に癒やされてから下る決心をした。

 

 

再び猿たちに注意しながら階段を下って半分までたどり着くと、ゆうやからひとこと。

「ゆうま、このままでいいの? 今日はまだおもしろいことしてないよ」

「わかったよ。これで勘弁してください」

すぐ横にいた猿に恐る恐る近づいてポーズを取る。

 

 

猿に襲われるかもしれないから、これが精一杯の距離です。

あー、髪の毛むしられなくてよかった!!

階段を下りてやっとのことで地上にたどり着いた。

 

 

 

空港へ向かう時間なので、ドライバーのコニーに連絡するためにWi-Fiスポットを探す。周りにあるお土産屋さんや飲食店でWi-Fiが使えないか回ってみるものの、全然見つからない。

バトゥ洞窟の敷地の外にカフェがないか探しに駐車場を通ると、そこに集まっているタクシードライバーたちに声をかけられた。

 

 

 

「おい兄ちゃん、タクシー乗らないかい?」

「大丈夫。友達が迎えに来るから」

「本当に友達なのか? まさかUberじゃないだろうな? Uberは違法だぞ」

マレーシアではまだUberは合法ではないみたいなので、コニーを友達ということにしておいた。

「でも、Wi-Fiがなくて連絡が取れないんだよね。近くにWi-Fi使えるところない?」

「うーん、近くにはないな」

 

 

 

諦めて立ち去ろうとすると

「オレのケータイ使っていいぞ」

「あざーす!!!」

おじさんのケータイを借りてなんとかコニーと連絡がついて、すぐに迎えにきてくれることになった。

 

 

 

神様、仏様、おじ様。ありがとうございます。

おじさんにお礼を告げて、オレとゆうやは駐車場から道路の方へ移動してコニーから見える位置に立った。

その後、無事にコニーに拾われて、バリへ戻るために空港へ向かった。