バリ島の大冒険

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第45話 DJガール

    あのお姉さんをDJブースで発見してテンションの上がったオレは、彼女に声をかけようと思ったところを、彼女のプレイの邪魔をしてはいけないと、もう一歩のところで踏みとどまった。仕方なく、目から熱光線が出そうなほどの眼力を込めて見つめた。     オレの熱光線は彼女に届いて、彼女の心を焼き焦がしたのだろう。彼女はオレに気づいて、DJの機器から手を離して、こち […]

第44話 クリスマスプレゼント

    クリスマスイブ二軒目のバーは、アグン山登頂の直前にもお世話になった、リサとユナのいるミュジックバーへ。 バーの前に差し掛かると、ユナが昨日と同じく笑顔で呼び込みをしていた。 オレたちの姿を見つけると、もちろん飲んでくわよね、といった具合にわずかに流し目を使ってオレたちに声をかけてきた。       その手には乗るか……いや、乗っておこう。お […]

第43話 クリスマスイブ

    カルボナーラを楽しんで宿へ戻ると、長い冬眠から目を覚ましたクマさん……、いや、リッキーがオレとゆうやを待ち受けていた。 「お前たち、オレ様を差し置いて、いったいどこに行っていたんだ?」 「いや、その……腹ごしらえというか、夕食というか」 なんだかよくわからないが、リッキーから嫌悪感を感じるぞ。       恐る恐るカルボナーラを食べてきたこ […]

第42話 復活

  アグン山から宿へ戻ると、宿のおばちゃんが笑顔でオレたちを迎えてくれた。       おばちゃんには、命がいくつあっても足りないから、アグン山だけは辞めておけ、本当に行くのか、やめろ、としっかりとマルセロ師匠を説得するべきだったと文句のひとつやふたつを言ってやりたいもんだ。が、体のすべてのエネルギーを使い果たしているので、今回は許してやろう。   […]

第41話 アグン山制覇

    スタート地点の寺院が見えてからというもの、早く帰って眠りたいという気持ちが強くなって、足が自然と前へ前へと進んでいく。 先頭のガイドのおっちゃんは、相変わらず疲労の色を見せることなく、オレとゆうやと、少しずつ遅れ始めたリッキーのことを確認しながら先導している。普段から何度と登頂しているとはいえ、4、50代であろうおっちゃんの体力は驚異的である。     […]

第40話 DEATH SLIDING デス・スライディング〜死への滑走〜

    下山は登り以上に過酷だった。登りで体力を使い切った上に、一歩一歩踏み出すたびに、登り以上の負荷が足にかかる。そんな体に、まず最初に岩場エリアの試練が襲いかかってきた。 ガイドのおっちゃんのあとに続いて、一歩一歩慎重に踏み出していく。       まずは安定するポイントを、何も目印のない大きな岩の中に探して、そっと足を置く。岩は露で湿っている […]

第39話 アグン山の頂き

    頂上で日の出を拝もうと、オレたちは疲労困憊になりながらも、過酷な岩場エリアを死に物狂いで登っていた。 軽いハイキングのつもりで来たのだから、手袋を用意しているわけもなく、氷のように冷たい岩を触るたびに、次第に手の感覚がなくなっていく。手を滑らせてしまえば、崖に落ちてゲームオーバーという死と隣り合わせの状況で、かろうじて集中力は保たれていた。     […]

第38話 頂上を目指して

    休憩のあと、道はさらに急勾配になり一段と険しくなった。 さきほどまでの余裕しゃくしゃくな雰囲気とは打って変わって、誰も口を利かなくなり、みんなのハアハアという息が響き渡る。 時折、列の最後尾で遅れているリッキーを、ガイドのおっちゃんが「がんばれ」と励ます声が聞こえるのだった。       無我夢中で先頭のおっちゃんのあとを着いていく。しば […]

第37話 神の山を登る

    車に揺られること約1時間、ついにウブドから目的地のアグン山に到着した。       オレの強みは、いつでもどこでも眠ければどんな環境だろうと寝れること。おかげで、出発30分前までお酒を飲んで酔っていたが、だいぶ回復したようだ。 今は午前1時。車を降りると、いくつか街灯があってオレンジの光があたりを照らしている。ここは山の1400m地点という […]

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