第43話 クリスマスイブ

第43話 クリスマスイブ

 

 

カルボナーラを楽しんで宿へ戻ると、長い冬眠から目を覚ましたクマさん……、いや、リッキーがオレとゆうやを待ち受けていた。

「お前たち、オレ様を差し置いて、いったいどこに行っていたんだ?」

「いや、その……腹ごしらえというか、夕食というか」

なんだかよくわからないが、リッキーから嫌悪感を感じるぞ。

 

 

 

恐る恐るカルボナーラを食べてきたことを報告すると、なぜオレを起こさなかったんだ、とものすごく怒られた。親父にも怒られたことないのに。それは嘘だが。とにかく一気にリッキーの機嫌が悪くなった。

誰か教えてくれ。いったい彼をどう扱えばいいのだ。リッキーを起こしていたとしても、キレられただろうし、どうすることもできないではないか。

 

 

 

そうだ。食べ物の怒りは食べ物で鎮めてもらおう。

「リッキー、今日はクリスマスイブだよ。オレたちまだ腹減ってるから、どこかに食べに行こう」

「おう、いい考えだな。クリスマスイブだからおいしいご飯を食べに行こう」

単純なやつめ。

 

 

 

マルセロとタイサの部屋はまだ暗い。まだ寝ているのか、暗闇でモゾモゾしている可能性もあるし、そっとしておこう。

こうして、オレとタカシは再び、リッキーと共に街へ繰り出した。リッキーの都合で、まずはリッキーのお土産探し。

しばらく露店を見て回ったが、特に惹きつけられるものがなかったらしい。オレとゆうやは、綺麗なお姉さんたちに見とれていたが。

 

 

 

クリスマスイブにふさわしいバーを探していると、どこからともなく、ロックな「ジングル・ベル」が聞こえてきた。音を辿っていくと、ボブ・マーリーのようなドレッドヘアの4人組バンドが、クリスマスソングをレゲエ風に演奏しているのを見つけた。うん、おもしろそうだ。なかなか好評なようで、店内はほぼ満席。

 

 

 

かろうじて、たった今空いたばかりの席に滑り込んだ。

オレとゆうやは二回目のディナーで腹いっぱいだったが、周りの人たちが食べているピザの匂いが、食欲を掻き立てた。

結局、それぞれがビールとピザを一枚ずつ頼むこととなった。

 

 

 

ウェイトレスが先にビールを運んできたので、まずは、アグン山からの生還を祝って乾杯。

「アグン山登頂、あと1回挑戦しとく?」オレはリッキーに笑顔で聞いてみた。

「はっはっはっは。お前は何ておもしろいやつなんだ。絶対に嫌だ!!」

リッキーのわざとらしい笑顔から一転、真剣な表情に変わり断られた。一番つらそうにしていたリッキーだから、しょうがない。

 

 

 

やがて運ばれてきたピザを食べながら、ボブス(ボブ・マーリーの複数形)の演奏を楽しんでいると、だんだんと席を立ってダンスを始める人達がでてきた。その中の黒人女性に目が言ってしまった。いや、別に好みのタイプとかそういうわけじゃなくて。黒人特有の持って生まれたリズム感と表現力豊かに、腰をクネクネというダンスがエロい!!!

結局、エロやん。という声がどこから聞こえてきそうだが、とにかくダンスがエロかった。リアーナくらいのエロさだ。

 

 

 

リアーナが踊っているすぐ隣の席には、家族連れが座っていた。5,60代の夫婦とティーンエージャーくらいの兄妹。リアーナは、奥様に目をつけたようだ。奥様の席の目の前で誘うように、腰を激しく振ったり、誘惑するような表情で踊り始めた。奥様は、何なのこの人、と困った表情。その反応に彼女の家族、周りの人たちは大爆笑。

 

 

 

曲が終わると、リアーナは奥様に投げキッスして一礼すると、自分の席に戻っていった。奥様は周りから拍手喝采を浴びるが、最後まで困惑していた。そんなに困っていたなら、オレが代わってやりたかったが、全身筋肉痛で体が言うことを聞かない。カクカクダンスで注目を浴びてしまっては、リアーナに申し訳ないので辞めておいた。

 

 

 

ボブスの演奏にも飽きてきたので、二軒目に移動することにした。