第76話 バリのファーストフード店の集客方法
マルセロがいなくなると少ししんみりとした空気になったが、せっかくバリに来ているのだからとことん楽しむべきである。
僕たちは気持ちを切り替えて、明日の大晦日を楽しく過ごせる場所を探すことにした。
観光客に人気で、僕たちがバリで最初に行ったクタのセガラビーチに来た。
相変わらずクタは観光客で賑わっていて、あちこちカップルや家族連れが歩いている。年末ということもあり、3週間前に来たときよりもさらに人が増えている印象だ。
とりあえず僕たちは海岸沿いを歩いた。砂浜のビーチが終わるポイントに差し掛かると、大量のゴミが積み上げられているのを発見した。
バリでは海水自体は綺麗なのだが、砂浜にゴミが放置されている事が多い。それだけで大きなマイナスポイントだ。観光客たちが捨てていくゴミなのか、バリの人たちが海を綺麗に保つ習慣がないのかは定かではないが、本当に残念である。
などと、真面目に考えていても今この瞬間を楽しめないので、世界各地で問題とされているであろうゴミ問題は、僕自身はゴミを減らすことを意識しながらも、対策は専門家たちに譲ることにする。
先へ進むと、砂浜の終わり辺りには石が敷き詰められた歩道になっていた。海沿いの斜面に座って海を眺めているカップルもたくさんいる。
陸側にはレストランやバーなどの飲食店が立ち並び、テラス席はほぼ満席で家族やカップルで食事を楽しむ人たちがいる。
こちらは男3人でなんだか虚しい気持ちになったが、気のせいだと思いこむことにして、僕たちは先にあるショッピングモールへ入った。
ショッピングモールではカウントダウンのイベント情報を探そうと思っていたのだが、ランチからだいぶ時間が空いていたので突如空腹が僕たちを襲い始めた。
そんなときにショッピングモールのフードコートで見つけたのが、沖縄の人たちが愛するA&W、通称エンダーを発見した。
エンダーとはアメリカ発のファーストフード店で、日本で唯一沖縄だけにあるようだ。
ちなみに、エンダーのハンバーガーなんかより、ルートビアや甘すぎるオレンジジュース(常識を覆すほどの大量の砂糖が使われているといううわさがある)が有名である。
沖縄出身の僕とゆうやが、沖縄を感じられるこの絶好のチャンスを逃すはずもなく、遠く離れていてもいつも僕たちの心は沖縄のことを思っているよという証拠を示すためにも、と言ってもエンダーはアメリカ発なのだが、リッキーに有無を言わさずにエンダーに入り込んだ。
そこで僕が注文するものといったら、やはり定番の・・・とかではなく、とっさに目についた日本食メニュー。
日本食メニューとして、唐揚げカレー、魚フライカレー、エビフライカレー、の3つがあった。ん、唐揚げカレーはわかるのだが、定番のカツカレーを差し置いて、裏メニュー的存在の魚フライカレーとエビフライカレーをレギュラーメニューにするとは何事だ。
バリ人よ、カレーといえば唐揚げカレーとカツカレーさえ用意しておけば事足りるのだぞ。むしろ、売上げアップすること間違いなしだぞ、と訴えてもしょうがないので、僕は唐揚げカレーを注文した。
唐揚げカレーがテーブルに運ばれてくると、僕はすぐにカレーにがっついた。久しぶりの日本の味にありつけると思った僕は甘かったようである。
ご飯がタイ米のようにパラパラとしてるので、ふっくらとした日本米とカレーだからこそ生み出せる絶妙なハーモニーは僕のもとに訪れなかった。
それでも食にこだわりのない僕にとっては、一応合格点なので良しとしよう。
その横で普通にハンバーガーを頼んで食べていたゆうやが僕に声をかけた。
「あそこ見てよ。あの店員たちずっとおしゃべりしてるよ。客の数に対して店員が多すぎない?」
確かに。久しぶりの唐揚げカレーに集中しすぎてまったく周りを見てなかったのだが、よく見ると、明らかに3人がレジ横でずっとおしゃべりしている。
店内には僕たち以外に2、3人客がいるだけなので、レジは1人で足りる。店内を掃除している店員が1人いる。厨房も人は足りてるようだ。
お前ら、余ってるぞ。日本だったらせめて客に見えないところで店員同士が話したりするものだが、彼らには客からどう見られるかなど関係ないようだ。
もしや、僕の解釈が間違っているのか。これは店長が意図的に仕掛けた戦略かもしれない。店員同士が仲良くしゃべっているのを客に見せて、この店は楽しく働いてますよとアピールしているのかもしれない。そうすることによって、客は心地よくなり、この店に親近感を覚える。何度でも来たくなるというわけだ。
この店長、できるぞ。
このことについては、バリではこれがスタンダードなのか、店長の斬新なアイディアなのか、以後、他の店も注意深く観察して判断したいと思う。
僕たちは食事を終えると、ほかに特にやることもないのでショッピングモールを出た。
もう帰るか、となっているときに僕にメッセージが届いた。
メッセージを見ると、サッカースクールのブラジル人の生徒の親、チアゴからであった。
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