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第16話 パトンビーチ

    ホステルはパトンビーチから歩いて5分もかからないところにあった。 通りにいろいろなお店が建ち並ぶ中、控えめにアピールする建物に吊るされた看板でどうにか場所が特定できた。 看板の下にある階段が二階の入り口まで続いている。   入り口の前には靴箱があった。スペースが足りず宿泊客たちの靴やサンダルが無造作に散らばっている。 それでも靴が盗まれる心配なさそうだ、と僕は […]

第15話 タイの洗礼

    ついに僕は、タイのプーケットに降り立った。 空港に着いた途端、僕にものすごい便意が襲いかかりトイレに駆け込むこととなった。   僕が便座に座って踏ん張っていると、隣から   ブリブリブリ、ブーブーブー   と、明らかにお腹を下している音がする。 僕はそんな音なんか聞きたくもないのだが、音量がでかい上にリピート再生しているのかと思うくらい鳴り […]

第12話 逆流注意報

    周りのカップルの幸せムードに押しつぶされそうになっていた僕に、仕事を終えたマークからようやくメッセージが届いた。 デートに誘った女の子からの返事くらい僕が待ち望んでいたメッセージだということを彼は知らない。僕が男からのメッセージでここまで嬉しくなったのは初めてかもしれない。   彼は仕事を終えたばかりで、いちど家に帰って準備する時間がほしいということで、1時間 […]

第11話 ハッピーエンディングはいかが?

    僕は記憶を辿って歓楽街に来た。 特に目的はないがとりあえず歩き回る。   昼過ぎの歓楽街で目立つのは、マッサージ店の呼び込みだ。 あまり人通りがないからか、店はガラガラで暇しているようだ。体のラインがわかるピチピチの制服を来た女性スタッフ全員が店の前で座っておしゃべりしつつ、目の前を人が通ると、即座に反応して獲物に食らいつくハイエナのように客引きをする。 &n […]

第10話 思い出の地

    翌朝、僕は誰かの足音で一度目が覚めた。どうやらホストが起きてきたようだ。 彼女はリビングを横切ってキッチンへ向かい、朝食の仕度を始めた。   そこで僕は再び眠りについたようだ。 次に僕が起きたときにはホストはいなくなっていた。   寝起きで頭がぼーっとしている僕は、リビングの窓から見える外の景色を眺めていた。夜は気づかなかったが、このマンションの周り […]

第9話 世界最強の寝具

    僕がターミナルに到着すると、マークが少し眠そうな顔とともに温かく迎えてくれた。 僕が彼に放った第一声はもちろん、「long time no see(久しぶり)」ではなく「I’m so sorry(誠に申し訳ありませんん)」である。 しばらくヒッチハイクは控えようと思う。   まずは、マークが僕を車でカウチサーフィンのホストの元へ送り届けてくれる。 […]

第8話 ジョホールバルの歓喜

    シンガポールからは2時間もかからずにマレーシアのジョホールバルまで来ることができた。   サッカーが好きな人なら一度は耳にしたことがあると思うが、あの「ジョホールバルの歓喜(サッカー日本代表がワールドカップ初出場を決めた試合の開催地)」のジョホールバルに僕はいる。僕は、あの、日本代表が歴史に名を刻んだ場所に立っている。   なんと感慨深いことか。 & […]

第7話 ヒッチハイクで国境超え

    翌朝、旅立ちの日がついにやってきた。僕はシンガポールから隣国のマレーシアへ向かう。 最後にサトシとルームメイトと朝食を食べているときに、僕はあることを思いついた。   「そうだ、ヒッチハイクで国境を越えよう」   二人は僕の発言に一瞬驚いたが、君ならできる、と後押ししてくれた。   二人と別れたあと、僕はさっそくマレーシア行きのバスが出るタ […]

第6話 華麗なるリハーサル

    夜はまだ終わらない。 サトシの劇団のリハーサルを見学しに行くことになっていた。彼から教えてもらった住所を頼りに僕はバスで移動した。   バスから降りてグーグルマップを頼りに歩いていくと、僕は住宅街へと導かれた。 目の前には家々が立ち並び、それ以外には何もないように感じられる。本当にリハーサル会場はあるのだろうか。 僕はマップを信じて歩き続けた。   […]

第5話 オレ流シンガポール観光

    前回、神秘的な夜について語ったが、神秘的な夜にふさわしい締めくくりを語ることを忘れていた。   日本語を話す彼が僕を送ってくれたあと、僕は近くの24時間営業のコンビニで買い物してからアパートに帰ることにした。 深夜2時過ぎということもあって、僕以外に客はいなくてシーンとしているかに思われた。 そこで聞こえてきたのが、グガァー、という少し遠慮気味ないびきだ。 & […]